メディア視聴時間は減少へ、タイパ志向とAI普及で行動変化――BCG調査
若年層を中心にタイムパフォーマンス(タイパ)志向が定着する中、メディア接触やコンテンツ消費の形は変化している。ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、日本全国の15歳から69歳までのメディア利用者3,717人を対象に「2025年度メディア消費者行動調査」を実施した。2022年度、2023年度、2024年度に続き4回目。テレビやインターネットを介したコンテンツ配信サービス、SNSなどへの個人の接触時間、利用サービス等の変化を把握することを目的としている。
総視聴時間は4.1時間に、中でもテレビの視聴時間が大きく減少
調査開始から2024年度まで、1日当たりのメディア総視聴時間(テレビ、SVOD=定額制動画配信サービス、AVOD=広告型動画配信サービス、SNSの合計)は約4時間半で安定的に推移していた。しかし、最新の調査では4.1時間と2024年度の4.4時間から減少した(図表1)。

この背景には、消費者の間でタイパを重視する行動が定着していることに加え、生成AIの普及に伴う情報取得経路の変化があると考えられる。限られた時間の中で効率的に情報や娯楽を得る志向が強まり、従来の受動的なメディア接触から、より選択的・能動的なコンテンツ消費へとシフトしている。
メディア別の内訳を見ると、初回の調査で1.9時間だったテレビ視聴時間が、今回調査では1.5時間へと減少しており、減少傾向は若年層に限らず全世代で同様だ。
SVODやAVODを利用する理由としても、「隙間時間での視聴」や「倍速再生」など効率的に消費できる点が重要な要素として挙げられ、タイパ志向が明確になっている(図表2)。タイパ志向はコンテンツの長さや構成、提供形式にも影響を与えており、今後のコンテンツ制作・配信のあり方にも変化をもたらすと考えられる。

ドラマやニュースは視聴者数全体が減っている
ジャンル別にみると、従来はテレビの強みであり「リアルタイム視聴」が最適とされていた、ドラマやニュースの視聴割合が特に大きく減少している(図表3)。ドラマやニュースは、視聴者数全体が減少しているうえに、視聴先がテレビからSVOD等へ移行する二重苦が起きているといえる。

なお、スポーツは全体の視聴割合は2ポイント減と比較的減少幅は小さいが、以前から過剰な放映権獲得競争が世界的に起きており、視聴経路がテレビからSVOD・AVODに流れる傾向があった。2026年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)がSVODサービスで独占配信されたことが話題となるなど、主要コンテンツのテレビ離れが進んでいる。スポーツコンテンツへのアクセスのあり方をめぐっては、ユニバーサルアクセス権(欧州を中心に導入されている、関心の高い試合を国民が幅広く視聴できるよう定めた制度)の観点からの議論も重要性を増している。

スマートフォンの利用が中心、一方で紙媒体も底堅く推移
利用デバイス別にみると、引き続きスマートフォンが中心である一方で、本・雑誌・新聞といった領域では、スマホ・タブレット・PCではなく紙媒体を好む傾向がみられ、利用率は底堅く推移している(図表4)。デジタル化が進展する中でも、コンテンツの特性や利用シーンによっては紙媒体の価値が維持されており、メディア消費は一様なデジタルシフトではなく、用途に応じた使い分けが進んでいるといえる。

今回調査を担当したBCG東京オフィスのパートナー、黒川 あやかは次のようにコメントしている。「今回の調査では、メディア接触時間が減少した点に加え、タイパ志向の定着やAIの活用拡大により、消費者の行動がより能動的かつ選択的になっていることが明らかになった。メディア企業にとっては、信頼性の確保に加え、限られた時間の中でどのように価値あるコンテンツを届けるか、そしてAIを含めた新たな情報流通構造の中でどのようにポジションを確立するかが重要な課題となる。従来の前提にとらわれず、消費者行動の変化に即した戦略の再構築が求められている」
調査レポート:2025年度メディア消費者行動調査(2026年5月)
調査概要:
日本全国の15~69歳の男女を対象にインターネットで実施。
回答者数:回答者4,400名のうち、有効回答があった3,717名
期間:2025年12月15日~22日