経営企画に求められる「聞く力」とは  BCG流・真意を引き出す対話力

経営企画の業務では、経営者や役員から指示を受けたり、起案内容を事前に見せて「お伺い」を立てたりする機会が多い。優秀で経験豊富な社員なら入念な事前準備を欠かさない。それでも、その後の会議で「方向性が違う」と指摘されたり、当初の指示や意見と異なることを言われたりした経験がある人が多いのではないだろうか。

また、経営層との議論において、企画内容をどれだけ説明しても議論が平行線をたどり、最終的には叱責されてしまうケースもある。こうした経営層との「ズレ」の多くは、「聞く力」を鍛えることで解決できる。BCGでは、相手の話を聞く前の準備や、会話中の思考の「型」を提唱している。連載第4回では、経営企画に求められる「聞く力」の鍛え方を考える。

人は思っていることをそのまま言葉にできない

指示通りに対応したにもかかわらず、経営層との議論で満足のいく合意を得られないケースは少なくない。ほとんどの場合、企画担当者が経営層の話を表面的に聞いており、相手の考えや想いを十分理解できていないことが原因だ。

人は思っていることをそのまま言葉にできない。みなさんも、複雑な問題について、誰もが理解しやすい論理構造で即座に言語化することはなかなかできないはずだ。時間をかけて思考し、紙に書き出したり、人との対話を繰り返したりするうちに、徐々に考えが整理されていくものだ。

まして経営層は、多忙な中で、次々と持ち込まれる文書や資料に目を通し、自分の考えを半ば即興的に発言しなければならない。筆者の経験上、新しいトピックを議論する際、事前に資料を一読してもらっても、経営層がミーティングで自分の考えを言語化できている割合は30~50%程度である。初見の資料であれば10~30%程度になるだろう。こうした前提を理解しないまま対話を進めると、図表1のような「ズレ」につながってしまう。

経営層との対話におけるズレを示した図表。表面的な対話だと、重要な論点を把握しないまま企画を検討してしまう

図表1では、担当役員が「競争環境や大手との差分をよく分析しておいて」と発言しているが、その裏側には「競争環境的に厳しいのでは?」や「大手に追いつけるようなシナジーがないと厳しいが、恐らくそんなものはないだろう」といったネガティブ寄りの考えがある。一方で、企画担当者は、担当役員の言葉尻だけを取り、「分析すれば、前に進められる」と都合よく解釈している。このままでは、次回の会議で役員から「こうじゃない」と言われてしまうだろう。

ここでのポイントは、担当役員が思考内容をそのまま言語化していない点だ。先述の通り、新規トピックについて即座に話すとき、人は自分の考えの10~30%程度しか言葉にできない。考えを言語化するのは、それだけ難しく、実際の会議においては時間的な制約もある。そのため、相手の発言から、その裏側にある70~90%の真意に迫るための「聞く力」が必要になる。

相手の真意を探るためには事前準備が大切

経営層の話を正しく理解するには、議論の前に相手がどのような考えを持つタイプなのか、下調べする必要がある。BCGでは、議論相手の真意を探るフレームワークとして、「考え」とその「バックグラウンド」に分解した要素を、事前に調査し、仮説を立てて議論に臨むことが多い (図表2)。

発言が生まれる仕組み・真意を探るフレームワークを示した図表。人の考えを支えるバックグラウンドは、知識・経験や立場などのハード面の要素と、視座や主義、感情、性格などソフト面の要素で構成されている

普段の発言などから、対象領域についてどのような考えをもっているのか、何を重要な論点だと考えそうか、事前に当たりをつけておくことで、本番での「聞く力」が格段に上がる。相手の考えに対する仮説を検証して磨くうえでは、考えを支えるバックグラウンドを分析することが有用だ。

バックグラウンドには、知識・経験や立場といったハード面と、視座、価値観、感情や性格といったソフト面があり、各要素を事前によく分析し、「なぜそういった考えをもっているのか」「どんな考えに至りそうか」について仮説を立てておくと、会議で相手の発言に対して適切な質問を投げながら、話を深く掘り下げることができる。こうした事前準備が、相手の真意にたどり着くうえで重要となる。

たとえば、ある案件に対し、考えが反対で、背景にある知識・経験(図表2-①)が深く、立場(同②)が「過去に類似案件を検討した当時、見送りの判断を促した」役員が、「その分析の元データは何か?」と発言したとしよう。この場合、純粋にデータソースに関心があるわけではなく、今回の提案が過去の自分の決断とは真逆であるため「データソースが恣意的に選ばれているのでは」「何か間違いがあるはずだから指摘しよう」という、ネガティブな意図が含まれている可能性が高い。

逆に、考えが中立で、知識・経験(同①)が浅い場合、純粋に「どういうデータがあるのか、他にどんな分析の切り口がありそうか」といった興味から質問している可能性がある。このように、会議中に即興的に繰り出される相手の発言の真意を理解するうえでは、その相手の考えとバックグラウンドに対する「解像度」の高さが鍵となる。

BCGがコンサルティングの現場でよく見るケースとして、経営層、経営企画の担当者、事業部門の企画担当者の間の視座(同③)のズレがある。経営層は10年後、あるいはそれ以上先を見越していたり、自社の現業を超えて物事を考えたりする。一方、経営企画の担当者は中期経営計画期間である3~5年の時間軸かつ現業の延長線上で思考する傾向にある。また、事業部門の企画担当者は今期~来期の短期的な目標達成や業務運営を中心に考える。

この視座のズレをお互いが認識しないまま議論した結果、合意形成がなされないことや、合意されたと思っていたことが事業部門によって遂行されない場合がある。BCGでは、こうしたズレを可視化するために視座・思考の「スコープ」を構造的に整理する。そのうえで、各スコープにおける論点を可視化し、「今議論しているのはこの部分。あなたが話していることはこっちの部分の話ですよね」と、交通整理しやすい土台を作って議論を進めるなど工夫している。

対話の中で相手の真意を引き出すには?

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