スコープ3の脱炭素、業界連携が鍵――シニア・パートナー森田の眼

日本でもスコープ3(サプライチェーン=供給網=での排出)の脱炭素にコミットしている消費財メーカーが出てきた。しかし、達成までの道のりが長いが故に、足元では隣を見ており動きは鈍い。これを打破するには、業界レベルの強力なリーダーシップが必要だ。消費財業界には明確なロードマップを描く特定の監督官庁が不在とも言え、リーダー企業が5年ほどの目線で目指す姿を示し、連携することが不可欠ではないか。

業界連携と言っても、実際には何を連携することに意味があるのか。スコープ3の脱炭素は、原材料を調達するサプライヤーが行動しない限り実現しない。サプライヤーからしても、多数の消費財メーカーからバラバラに行動を要求されても混乱するばかりだ。消費財メーカーがサプライヤーに何を要求し、支援するのか、足並みをそろえることが大切だ。

消費財メーカー自身も改革しなければならない。これまでの調達部門はQCD、すなわち品質、コスト、納期を重視してきた。ここにサステナビリティーの要素が加わり複雑化するし、何よりもサプライヤーにインセンティブを付けることが必要だ。先進企業では、調達部門とサステナビリティー部門が融合する動きもある。

「競争と協調」という言葉がある。脱炭素自体は協調領域であり、業界連携が必須だ。しかし、横並び意識という、日本企業というよりは日本人に根差した価値観がこれを阻害してきた。更に、脱炭素は単なる守りではなく、攻めになり得るものだ。こうした事業機会を逃して良いものなのか。

※本記事は、2024年7月2日付の物流ニッポン新聞に掲載されたコラム「ちょっといっぷく」に掲載されたものです。物流ニッポン新聞社の許可を得て転載しています。