国連WFP協会をBCGが支援 戦略策定に「プロボノ」活動で

ボストン コンサルティング グループ(BCG)は認定NPO法人「国際連合世界食糧計画WFP協会(安藤宏基会長)」と共同でこのほど、同協会の安定的な活動と成長を実現するための戦略の策定に携わった。同協会は、世界の飢餓をゼロにすることを使命に活動する国連唯一の食料支援機関、国連世界食糧計画(国連WFP)を支援する日本の認定NPO法人で、情報発信や寄付金集めなどを担っている。BCGはコンサルタント5人がプロボノ(専門知識を生かしたボランティア活動)として参加した。

戦略策定にあたってまず、日本における寄付市場の現状を調査した。寄付市場全体は中期的にみると、法人の寄付は減少、個人は微増の傾向を示している(図1)。個人はふるさと納税やクラウドファンディングなどに接する機会が増え、寄付が身近になっていることが考えられる。国連WFP協会をみると、寄付額は増加傾向にある。特に2022年はウクライナ戦争などがあり大きく増えた。

こうした環境下で、国連WFP協会がどのように安定的に寄付額を増やして支援活動を拡大していくか。国連WFPは紛争や災害で飢餓に陥った人々・地域に対して食料や現金を支援している。パレスチナの紛争で深刻な危機にあるガザ地区では、2023年10月以降、国連の避難所に身を寄せている人を含む100万人以上にパンや缶詰などすぐに食べられる食料を届けた。しかし、激しい戦闘と国境検問所の通過制限などによって、必要とされる支援物資の搬入と配給は困難な状況で、ガザのほぼ全人口にあたる220万人が深刻な飢餓に直面しているとされ、さらなる支援と人道的停戦を呼びかけている。

また、紛争地以外でも、例えば途上国では「学校給食支援」を実施し、学校で朝食や昼食を提供して子どもたちの成長を助けると同時に、就学児童を増やして、貧困から脱する手助けを行っている。

ブルキナファソに届いた支援物資 © WFP/Cheick Omar Bandaogo

このような活動への認知や理解をさらに広げ、他団体の成功事例なども踏まえながら、継続的な支援が得られるように国連WFP協会も活動の輪を広げる必要がある。

2022年の国連WFP協会への寄付額は44憶円で、うち個人21憶円、企業・団体23憶円とほぼ半々。これまでは個人寄付が多かったが、22年は企業・団体のウクライナ緊急支援が大きく増えた。団体によっては個人、法人のどちらかに注力しているところもあるが、国連WFP協会は今後も個人、法人ともにバランスよく接点を増やしていくことを目指す。

例えば、個人については、SNSなどデジタルメディアのさらなる活用、法人からの支援については、関連性の高い食品、小売業界をはじめ食のバリューチェーンを広くとらえ、川上から川下まで、農業、食品用容器、運輸など幅広く対話の機会を増やし、よりよい関係を築くことなどを検討していく。

また日本では、紛争や自然災害など大きな出来事、いわば“有事”の際に寄付への関心が著しく高まるが、“平時”のときは関心がそれほど高くないという特徴がある(図2)。したがって、有事の際にどのように認知を高めて、単発の寄付から継続的な支援につなげていくかなども重要な課題として議論を重ねた。

国連WFPなど国連5機関が23年7月に発表した報告書「世界の食料安全保障と栄養の現状」によると、22年に世界で飢餓に直面した人は6億9100万人~7億8300万人で、19年以降、1億2200万人増加した。特にアフリカは深刻で、5人に1人が飢餓にあるという。この傾向が続けば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標2に掲げられている「2030年までに飢餓をゼロにする」は達成できないと報告書は警告している。国連WFPの活動と支援の広がりが目標達成には欠かせない。

プロジェクトに参加しているBCGの折茂 美保マネージング・ディレクター&パートナーは「国連WFPの食に関する活動は、各地で起こる紛争や大規模災害などの現場で、多くの人びとの命を助けるのみならず、学校給食支援や自立支援など途上国の人びとの未来を作ることにもつながっています。BCGは国連WFPとグローバルアライアンスを組んでおり、日本でもこれまでの知識・経験を生かすことで、世界の人々の命を救うことに少しでも貢献できればと思っています」と話している。

ガザで、小麦粉、缶詰、サラダ油などが詰まった食料ボックスを配布している様子 © WFP/Ali Jadallah