AIロボットに人の動きはできるのか――シニア・パートナー森田の眼

先日、テクノロジーに関する展示会を見る機会があり、AI(人工知能)とロボティクスの融合がここまで進んでいるのかと驚いた。頭であるAIとカラダであるロボティクスの連動は、工場の組み立て機械のような、目的が特化したものから導入が進んでいるが、より汎用的な用途に広がることで日常に根差したものになるのではないか。

ただ、ロボット工学でよく知られているのは、人間にとって難しいことはロボットにとって簡単であり、人間にとって簡単であるものはロボットにとって難しいということだ。ロボットにとっては、周囲の環境を正しく理解すること、実用的な物理学のセンスを得ることは難しく、かつそれらを含め動きの正確な制御は難しい。

頭については仕上がってきている。展示会にも、質問に対して自然な受け答えができるロボットがあった。また、多少強い口調で話し掛ければ、こちらの感情をくみ取って配慮した回答をするし、ロボットの顔の表情にもそれが出ていると感じた。一説によると、現在の生成AIのEQ(心の知能指数)は117あり、人間の上位11%くらいの能力らしい。

一方で、カラダとの連動、すなわち複雑な動作をするロボットの実現に向けたハードルはいまだに高い。あらゆる地形に対して転ばずに歩ける犬型の四足歩行ロボットが展示されていたが、人のあらゆる動作を汎用的に代替するまでにはまだ距離がある。これを埋めるのは学習データの充実に向けたオープンソース化と、自ら学ぶ強化学習の組み合わせになるだろう。

※本記事は、2025年6月13日付の物流ニッポン新聞に掲載されたコラム「ちょっといっぷく」に掲載されたものです。物流ニッポン新聞社の許可を得て転載しています。

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