AIエージェントは人に置き換わるのか――シニア・パートナー森田の眼

AIエージェントとは、ヒトが設定したゴールに基づき、自ら必要なデータを収集してタスクを決定し、目標達成に向けて遂行するシステムだ。自律的に判断できる、継続的に学習して適応できるという特徴を持ち、特にカスタマーサービスやソフトウェア開発などの領域で、今年爆発的に普及することが見込まれている。

さらに、AIエージェント同士の連携も可能だ。例えば、サプライチェーンマネジメント全体をつかさどるAIエージェントが出した指示に対し、需給管理や在庫管理、物流管理を担うAIエージェントが社内システムからデータを集め、自律的に課題を解決することで全体最適の実現すらできるようになっている。

これが意味することは何か。これまでは「ヒトの仕事を効率化することに役立つ」程度だったAIがついに、ヒトそのものに置き換わるということにほかならない。IT(情報技術)業界の一部では、ソフトウェアを開発するエンジニアをAIエージェントに置き換えて採用を抑制する動きが始まっている。既に中級エンジニアくらいの腕があるらしい。

一方で、日本においてAIがヒトに「本当に」置き換わるには、解雇が困難という日本固有の人事慣行や、多くの日本企業における社内データの蓄積不足がボトルネックになるだろう。加えて、トップダウンで白紙からビジネスモデルを再考することは、日本企業が長らく苦手としてきたものだ。私たちはAIエージェントによる生産性革命の波を捉えられるか、のみ込まれるかの岐路に立っている。

※本記事は、2025年2月25日付の物流ニッポン新聞に掲載されたコラム「ちょっといっぷく」に掲載されたものです。物流ニッポン新聞社の許可を得て転載しています。