日本は生成AIを業務で使用する人の割合が最低 BCG調査
※本記事のサムネイル画像はAIで生成したものです
BCGが世界各国の経営者や従業員を対象に実施した最新調査によると、生成AIを日常的に使用する従業員の割合は昨年に比べ大幅に増加した。しかし、日本は他国に比べて生成AIが仕事に与える影響を不安視する割合が高く、業務で活用する従業員の割合も調査対象国中最低という結果になった。
生成AIを日常的に使う人ほど仕事を奪われる不安を抱く
日本を含む世界15の国・地域で経営幹部、管理職、従業員として働く約1万3,000人を対象に、AI活用に対する考え方や心情について尋ねた。調査は昨年に続き2回目。
「AIが仕事に与える影響」について働き手の意識1を調査したところ、「(効用を)確信している」と回答した人の割合は42%と、昨年の26%から増加した(図表1)。同時に、「不安を感じている」の割合も昨年から5%ポイント増加した。
また、AIや生成AIを日常的に使用(少なくとも週に1回)している人のうち49%が、「(AIや生成AIの進化によって)今後10年で自分の仕事がなくなるかもしれない」と考えている一方、全く使用していない人でこの割合は24%だった。
この結果について、調査を実施したBCG Xのグローバルリーダーを務めるシルヴァン・デュラントンは次のように分析する。「生成AIは革命的なテクノロジーであり、人々が相反した感情を抱くのも不思議ではない。経営リーダーは、人間が生成AIを理解し、対話する道のりの複雑さを認識することで、人間と機械という双方の働き手の強みと価値を最大化する形へと組織を再構築できる」
日本では生成AIを不安視する割合が高い
調査結果を地理的に見ると、ブラジル、インド、ナイジェリア、南アフリカ、中東諸国2といったグローバルサウスの国々の回答者が生成AIの効用をより確信していることが明らかになった(図表2)。
不安視する割合はグローバルノースの方が比較的高い傾向にあり、南北で意識に差があることがうかがえる。日本は「確信している」の割合が調査対象国中最も低く、「不安を感じている」の割合は最も高かった。
業務で活用する従業員の割合は世界的に増加
生成AIを日常的に使用する従業員の割合は52%と昨年から2倍以上に増加、うち43%は業務にも使用していることもわかった(図表3)。これに対し、日本では生成AIを日常的に業務で使用する人の割合が管理職・従業員ともに調査対象国中で最低だった。管理職で31%、従業員で16%と、世界平均に比べて顕著に低い(図表4)。
AIや生成AIが自身の仕事に与える影響に関連してトレーニングを受けた人の割合についても調査した。各国平均で見ると経営層で50%、管理職で30%、従業員で28%がすでに受けたと回答しているものの、日本ではこの割合が47%、13%、11%と、特に管理職と従業員で低い水準にとどまった。
BCGで生成AIトピックの日本リーダーを務める中川 正洋は「日本は諸外国と比較し、生成AIの日常的な活用が十分に進んでいない。トレーニングを受けた従業員の割合も他国に比べて低く、不安につながっている可能性が高い」と指摘する。
生成AIツールの使用で週に5時間を節約
生成AIが仕事にもたらす具体的な効用については、「時間を節約できる」(84%)という側面を実感している人の割合が最も高かった。生成AIを業務に使用している回答者の58%が、生成AIツールを使うことで週に少なくとも5時間を節約できていると回答している。
節約した分の時間は、「より多くの業務をこなす(41%)、「新規の仕事に着手する」(39%)、「生成AIの利用法を探る実験をする」(38%)、「戦略的な仕事に取り組む」(28%)といったことに充てられている。
レポートの共著者であるBCGパリ・オフィスのヴァンサンヌ・ボーシェーヌは次のように述べている。「楽観や好奇のまなざしを向ける段階から、生成AIが仕事に与える前向きな効果を信じ、価値を実現していく段階に来ている。職場への生成AI導入が進み、働き手一人ひとりがその便益を実感しはじめている。企業も、投資の価値を引き出すためには生産性を超えた視点で考え、生成AIツールで節約した時間を価値とやりがいのある活動に振り向けるといった能動的なアプローチが重要だと感じはじめている。従業員自身がそのように行動できるようリスキルし、組織やオペレーションモデルを再構築する必要性も、同時に実感しつつあるようだ」
調査レポート: 職場におけるAI活用に関する意識調査 2024(2024年6月)