再エネへの転換と生物多様性の関係――シニア・パートナー森田の眼
脱炭素社会の実現に向け再生可能エネルギーへの転換が進んでいるが、それが同時に生物多様性を毀損しているのではないかという批判がある。典型的な例は、メガソーラー(大規模太陽光発電所)設置の際、森林伐採により周辺の生態系が破壊されているという主張だ。こうした事実が存在するとして、それにどのようなスタンスで対応するかに注目が集まっている。
オランダでは、再エネプロジェクトの入札で生物多様性が評価項目となっており、近年の大型事業では評価項目の半分が生物多様性関連だ。再エネを購入する企業、特に大量の電気を使うデータセンターなどでは、脱炭素と生物多様性の両方に貢献するために、プレミアムを払ってでも生物多様性に配慮した再エネを購入する動きもある。
日本に目を移すと、再エネにおいて生物多様性をどう扱うかについてのスタンスがまだ定まっていない。これまで政府、再エネ企業ともに脱炭素をゴールとして全力で、一直線に走ってきたことは間違いない。しかし生物多様性を重視するということは、ゴールを動かすことにほかならない。動かせば速度が落ちるかもしれないという懸念は理解できる。
一方、ゴールを動かすのが後になればなるほど、急な方向転換を余儀なくされ、急ブレーキが必要になるだろう。生物多様性への対応がいずれ避けられないのであれば、ゴールの方向性を早期に見定め、減速を最小限にしつつ方向転換した方が賢い。こうした絵を戦略的に描き、先んじて変革する企業が優位性を構築できるのではないか。
※本記事は、2024年3月26日付の物流ニッポン新聞に掲載されたコラム「ちょっといっぷく」に掲載されたものです。物流ニッポン新聞社の許可を得て転載しています。