リーダー就任最初の100日ですべきこと【BCGクラシックス・シリーズ】

4月になり、新しくリーダーになった人も多いだろう。2003年に初版が発行され、長年、世界の経営者の方々に読み継がれてきたBCGの論考「リーダー就任:最初の100日間」。企業や組織のトップに就任する人、部署やチームのリーダーになる人、初めて後輩を率いる人、あらゆる新任リーダーにとってヒントとなる10の原則を紹介する。

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読者の皆様の大半は、恐らく今後5年以内に新しい仕事に就くことになるでしょう。今の会社で昇進するか、あるいは別の会社に引き抜かれるかして、企業のトップになる方も多くおられるでしょう。組織のリーダーとしての最初の100日間は決定的に重要です。味方も敵も同様に、あなたに長期的な成功あるいは失敗の可能性の兆しが見えないか、じっと注視しているからです。

かつてのルーズベルト大統領の境地に少しでも近づくためには、新リーダーは、誰からも自分が見えるようにすること、地に足がついた楽天家となること、行動志向であること、そして、喜んで人の意見に耳を傾けることが必要です。

私たちボストン コンサルティング グループ(BCG)では、20人のCEOの方々に、ご自身のCEO就任後の最初の数カ月間について─新任CEOとして、やりたいと考えていたこと、就任後に実際に行ったこと、やってみて後悔したこと、やらずに後悔したこと、など─語って頂き、いくつかの成功事例や多くの実践的なアドバイスを頂戴することができました。以下にあげるのはその一例です。

  • 「まず診断せよ、それから決断せよ」
  • 「直感に従え」
  • 「メモを取れ。それから優先順位をつけ、行動せよ」
  • 「トップとしてのテーマは3つだけ。すなわち人材、戦略、企業価値であることを肝に銘ぜよ。それ以外はすべて二次的なものだ」
  • 「信頼のおける人々でキッチン・キャビネット(幕僚団)を作り、問題解決に活用せよ」

さらに、私たちはCEOの方々に、今また新任CEOとして仕事を最初からやり直すことができるとすればどんなことをするか、自分自身へのアドバイスを考えて頂きました。多くの方が共通してあげられた10の原則を、以下にご紹介します。

1. 会社のリーダーシップチームを見直し、就任後最初の30日以内に、改革の第1ラウンドを完了すること

自分自身が任命した直属の部下たちほど、事業に強く働きかけられる人たちはいません。この幕僚グループを組成する際、信頼できる外部人材(アウトサイダー)を数名加えると、企業文化の変革を助け、組織に緊張感をもたらす上で有効です。しかし、一方で古参社員も軽視してはいけません。古参社員は、会社の歴史を熟知し、長年の経験がある上に、通常は自分個人の仕事やポジションより会社全体により関心がある人たちだからです。

適切な人選のためには、ある程度調査を行った上で、あなた自身の直感に従い人選をするべきです。誰が本当に信頼できそうか、感覚をつかむためには、人事担当役員といっしょに候補者の履歴を検討し、業績記録に目を通し、有力な候補者とは個人面談を行います。候補者の評価には、戦略的な視点を盛り込むべきです。すなわち、それぞれの候補者は、市場の変化、競合上の強み・弱み、コスト面の改善機会などを理解できているか。今本人がもっている技量に加えて、どのようなスキルの追加が必要で、そのスキル習得にどのくらい時間がかかるのか、等々。あなたの実戦開始までのカウントダウンは、経済紙に幕僚チームのメンバーを発表したときにいよいよ始まります。

2. あなた自身の「より良い会社」のビジョンを伝え、そのビジョンに到達する道筋を社員が理解しているかどうかを確認すること

経営計画の詳細を伝えるタイミングとしては早すぎるかもしれませんが、少なくともあなたが今後意思決定を行う際に枠組みとして使うような基本的な価値観は伝えるべきです。あなたが誠実であり有能であることを社員に理解させる必要があります。質問には正直に答え、奇跡を約束しないことです。また、あなた自身の経営スタイル、すなわち、自分が他の人をどのように扱い、他の人は自分をどのように扱うべきか、明確に示すべき時でもあります。こうすれば、社員があなたを喜ばせる方法を探るために貴重なエネルギーを無駄にすることを防げます。

3. 最前線の営業スタッフ10人と会って、「自社は何をすべきか」を聞いてみること

指揮系統を動かし始めれば、新しい情報源が生まれることになります。現場の社員はビジネスの裏表を知っています。彼らは、顧客のあらゆる苦情に耳を傾け、品質に関する問題がどこにあるかを知りつくし、財務担当者より早く業績下降を予測できることもよくあります。現場の仕事を良くするためにトップとして何ができるか、仕事の何が彼らに満足感を与え、何をこれからも維持すべきであるかを聞いてみてください。今ここで誠実に対応すれば、今後何年にもわたって貴重な情報を入手する礎を築くことができます。

4. 主要な顧客10人にお会いし、自社の事業に対する外からの見方を伺うこと

顧客に会うことは、今の業績、ビジネスの動向、隠れた競合関係などに関する示唆を得る手段としてきわめて貴重です。さらに、あなたの会社の幹部社員と顧客企業の幹部社員が同席すれば、両者間の関係を固める上で有効です。顧客の言葉に注意深く耳を傾け、フィードバックを快く受け入れ、貴重なアイデアがあれば必ず行動することが重要です。