プラスチック条約合意に向けた課題――シニア・パートナー森田の眼

プラスチックの普及率が高まったきっかけは第2次世界大戦だ。アルミニウムや銅、鉄が軍事利用に回されたことでその代替素材として注目が集まり、研究開発と生産が進みコストが下がった。実はかなり新しい素材といえるが、今やマイクロプラスチックは生態系を破壊する最大の要因の一つとして広く認知されるまでになった。

2040年までにプラスチック汚染根絶を目指した、法的拘束力を伴うプラスチック条約を国際間で年内に合意すべく議論が続いている。環境への懸念が大きい種類のプラスチック素材から段階的に生産や使用を削減したり、製品設計で使用量を減らしたり、詰め替えやリサイクルを奨励することも含まれる。

プラスチック条約が石油・化学業界や、パッケージにプラスチックを使う消費財・小売業界に与える影響は想像に難くない。これが国際間での意見の相違を生む原因となっている。推進派の急先鋒は欧州だが、反対派の多くは産油国だ。州ごとに規制を検討している米国は、大統領選の行方にも影響があるだろう。日本は推進派に属している。

ただし、推進派でも日本と欧州のスタンスは違い、悩ましい。日本は再生プラスチックを増やそうとしても、材料の廃プラスチックの多くを焼却処理している現状を批判される可能性がある。また、バイオマスプラスチックの研究に投資しているが、使用後分解されて自然に戻る生分解性プラスチックでないと意味がない、とはしごを外される恐れもある。どう立ち回るか、国や業界の見解をそろえることが必要だ。

※本記事は、2024年2月20日付の物流ニッポン新聞に掲載されたコラム「ちょっといっぷく」に掲載されたものです。物流ニッポン新聞社の許可を得て転載しています。