新規事業の成功は“打席に立った回数”が糧になる 粘り強い投資の重要性

この20年で、企業はデジタル関連の組織能力の構築に投資し続けてきた。次のステップは、築き上げたネットワークやデータ、ブランド、人材などの資産を活用して企業の成長を加速させることである。その方法として最も有効なのが、事業構築だ。そこには、新規事業の立ち上げ、サービスの開発、市場の開拓、あるいは既存事業の拡大など、成長に必要な多岐にわたる活動が含まれている。デジタル領域に関する専門家集団BCG Xが、世界の大企業の経営リーダー1,051人を対象に実施した事業構築に関する調査の結果を紹介する。

73%が年平均5件のペースで新規市場参入や買収などに着手

事業構築に重点を置いている企業は、高成長のビジネスチャンスに注力している割合が高いようだ。調査によると、「事業構築は自社の優先事項である」と回答した経営リーダーは73%にのぼり、2021年以降、年平均5件のペースで新規市場参入や買収などの高成長が見込める活動に取り組んでいると答えている。これらの企業は年間売上高の約27%にあたる資金を、自己資金による新規事業の立ち上げ、スタートアップの買収、共同出資などに投資している(図表1)。

図表1。事業構築に重点を置いている企業は、年間売上高の27%にあたる資金を、新規事業の立ち上げや、既存のスタートアップの買収など、高成長のビジネスチャンスに投資している。

継続的な事業創出の態勢が整っている企業は半数にとどまる

しかし、生み出した新規事業を拡大させたり、さらに新しい事業を継続的に創出したりできる態勢が整っていると回答した経営リーダーは半数(52%)にとどまった。

BCG X北東アジア地区リーダーの平井 陽一朗は、事業構築に粘り強く投資する重要さを語る。「この20年間、日本企業もデジタル関連の組織能力の構築に一定の投資をし続けてきたが、同じ業界・業種内であっても、個社ごとの本気度の濃淡により、圧倒的な差が生まれてきている。粘り強く投資し続けている企業にとっては、個別事業の成功体験だけでなく、失敗体験も含めて“打席に立った回数”が必ず糧となる。その経験が活き、生成AIを含むデータ活用ビジネスや、デジタルを組み合わせた脱炭素ビジネス、さらにはWeb3関連ビジネスなど、今後も多くの新しい事業機会を捉えていくことができるだろう」

製品を売り出すまでに時間がかかりすぎる

新規事業の構築にかかる期間についても尋ねたところ、事業を開始するかどうかの検討には平均して最長3年、ローンチ(製品・サービスの提供開始)までにはさらに3年かかっていることがわかった。また、調査対象となった経営リーダーらは、事業が黒字化するまでに3、4年は投資するつもりだと回答している。新規事業には根気強い投資が求められることがうかがえる。

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初期段階で迅速に動けば、成功率は高まる。その点で、企業は自社のローンチが遅すぎると認識しているようだ。48%が、自社が製品を売り出すまでにかかる期間は、スタートアップ企業よりも長いと回答している。また、ほぼ全員が「自社の方が先にローンチできるはずだった」「先にローンチすべきだった」事業について、競合他社に先を越された例を複数挙げている。

調査結果をまとめたレポート「How Companies Can Speed Up the Business of Business Building」では、200を超える新規事業の立ち上げを支援してきたBCG Xの経験に基づき、事業構築を成功させるうえで重要な9つの戦略資産と、適切な準備のステップを提示している。

調査レポート:How Companies Can Speed Up the Business of Business Building(2023年11月)