「攻め」の循環型経済に発想の転換を――シニア・パートナー森田の眼

「攻め」のサーキュラーエコノミー(循環型経済)が注目されている。廃棄物をなくして資源を循環させ、環境負荷を低減させるという「べき論」ではなく、欧州のデジタル製品パスポート(原材料からリサイクルに至るまでの環境関連情報の開示)のようなルールに従う「守り」の発想でもない。ビジネスモデルを転換し、いかに競争優位性をつくり、もうけるかという発想の転換が求められている。

まずは、自社製品を部品、素材に分解して、それぞれのライフサイクル(寿命)を考えることから始めると良い。仮に製品が寿命を迎えても、全て廃棄するのはもったいない。部品や素材の寿命が残っているなら、再利用することで使い切れる。寿命に関するデータを集約し、製品を分解して、再利用するフローをつくることが重要だ。

こうした議論をすると「リサイクルをするとコストが上がる」という声が上がるが、簡単に諦めるのは思考停止だろう。最終製品、部品、素材の寿命を最大限全うした際の生涯価値に注目すると、最初に製品価格が高くなっても後で回収できる。サブスクリプション(定額課金)型ビジネスモデルに転換する機会でもある。

また、高い価格を後から回収するモデルと相性が良いのが、リースをはじめとする金融機能だ。日本の製造業も、製品、部品、素材をまたいだフローをつくり、金融機能を埋め込むことで、新しいビジネスモデルへの転換が見えるかもしれない。更に資源が希少になる領域にうまく焦点を当てれば、もっと長期の優位性構築にもつながるだろう。

※本記事は、2024年1月16日付の物流ニッポン新聞に掲載されたコラム「ちょっといっぷく」に掲載されたものです。物流ニッポン新聞社の許可を得て転載しています。