過去の再構成から生まれる芸術――シニア・パートナー森田の眼

※本記事のサムネイル画像はAIで生成したものです
ニューヨーク近代美術館(MoMA)の初代館長であったアルフレッド・バーは、現代美術がどのような系譜で発展したかを1枚の図に表した。浮世絵のように、それまで芸術として見なされてこなかった領域も、現代美術を形作る土台の一つとして発展したことを示している。人間は過去の作品に刺激され、再構成して新しい芸術を創造してきたということだろう。
それならば、現在の作品の価値が高まれば、過去の作品もまた評価されるはずだし、よりリスペクトされるようになる。アルフレッド・バーが何を考えていたかは今となっては知る由もないが、この1枚の図は、多くの人々にとって現代美術に対する価値を考えたり、その根源にあるものの価値を認識したりするきっかけになったのは間違いないだろう。
少し前、生成AI(人工知能)が描く浮世絵風の画像が話題になった。過去に描かれた浮世絵の要素を生成AIが分解して再構成したものだ。だとすると、人間固有の能力だと思っていた創造性、そしてその極致である芸術でも、人間とAIがやっていることは本質的に同じなのではないかということに気付き、はっとした。
人間と生成AIがより協働し、過去を再構成して芸術作品を生み出すようになれば、オリジナリティーは何かということが問題になる。それは誰のものなのか、どこから来たものなのかがどんどんあいまいになる。訴訟の多い現代において、著作権法でオリジナリティーのあるものを保護することなどもまた、難しくなっているのではないか。
※本記事は、2025年7月15日付の物流ニッポン新聞に掲載されたコラム「ちょっといっぷく」に掲載されたものです。物流ニッポン新聞社の許可を得て転載しています。