※本記事のサムネイル画像はAIによる生成画像です
ボストン コンサルティング グループ(BCG)が行った世界各国の職場におけるAI活用に関する意識調査の結果から、一般従業員のAI活用が昨年から大きく進んでいることがわかった。日常的な利用率(週に数回以上)は74%に達し、これは昨年の51%から20ポイント以上の上昇となる。
日本の一般従業員によるAIの日常的な利用率は66%、世界平均を下回る
BCGは、日本を含む世界14の国・地域で、経営層から管理職、一般従業員まで1万2,000人近くを対象に、AI活用に関する考え方、導入実態などについて尋ねた。調査は今年で4回目。
一般従業員によるAIの利用率を地域別で見ると、インド(95%)、中東諸国(93%)が世界平均を大きく上回り、グローバルサウス諸国が引き続きAI活用を牽引していることがわかる。一方で日本は66%となり、米国(62%)などを上回るものの、世界平均には届かなかった(図表1)。
全体の47%が「AIへの指示や管理を担う役割へシフトした」と回答
調査では、AIの普及に伴い仕事のあり方が変容しつつあることもわかった。AIによって自身の職務に求められるスキルが変わったと回答した割合は、全回答者の72%にのぼった。また、仕事に求められる水準が上がっていると答えた割合は60%、AIへの指示や管理を担う役割へと業務の重心が移ったと答えた人も全体の47%を占めており、仕事に求められる質や人が担う業務範囲もAI活用で変わっていることがわかる(図表2)。
また、AIを日常的に利用している人のうち、67%が仕事への満足度向上を実感している一方で、思考や判断による疲労感、いわゆる「認知的負荷」が増大したと回答した人も41%にのぼった(図表3)。AIによって働きやすさが向上しているなかで、業務の難易度も上がるというパラドックスが明らかになっている。
42%の一般従業員がAIで1営業日以上の時間を捻出できている一方、価値の創出には至らず
AIの利用は広がっているものの、多くの企業が新たな価値の創出には結びつけられていない。AIを日常的に利用する一般従業員の42%が、AIによって週に少なくとも1営業日分の時間を創出していると回答したものの、66%はその時間をどのように活用すべきかについて十分な指針を示されていない、あるいは全く示されていないと回答した。また、半数以上が創出した時間で戦略的な業務を行っていない。
AIエージェント活用についても調査したところ、AIを日常的に使う人のうち30%はすでにAIエージェントが業務フローに組み込まれていると回答した。これは昨年調査の13%から2倍以上の増加だ。さらに61%は、今後3年以内にAIエージェントが自身の業務の半分以上を実行できるようになると考えている。しかし、全回答者の52%がAIエージェントについて十分に理解していないと答えており、AIガバナンス(監督体制の整備や責任の所在の明確化)が技術の進化に追い付いていないことも明確になった(図表4)。
企業のAI活用は、AIツール導入を通じた個別業務の効率化から、業務フローやプロセス全体の再設計、さらには新たなビジネスモデルや製品の創出へと広がりつつある。実際に業務プロセスの再設計やビジネスモデルの創出を進めている企業の従業員は、そうでない企業の従業員と比べて、以下のような特徴があった。
- AIによる事業成果の向上を実感している割合が24ポイント高い
- 週に1営業日以上の時間を創出できている割合が22ポイント高い
- 仕事への満足度向上を実感している割合が20ポイント高い
BCG Xで日本における生成AIトピックのリーダーを務めるマネージング・ディレクター&パートナーの中川 正洋は「今回の調査結果からは、AI活用が企業活動全体に広がりつつあり、人に求められる能力や人が担うべき責任の変化が着実に進んでいることがうかがえた。一方で、効率化によって生まれた余力をどの領域、業務に振り向けるべきかについてはまだ明確になっておらず、従業員の役割の在り方・業務のプロセスを再設計することが求められる。また、AIエージェントの実装が加速するなか、統制や責任の枠組みづくりは依然として発展途上だ。AIの価値を持続的な競争力へと結びつけるためには、経営層が主体となって組織変革とガバナンス強化の両面を推進していくことが重要だ」と述べている。