森林の炭素吸収量、測定の課題――シニア・パートナー森田の眼

植物は光合成により二酸化炭素(CO2)を吸収し、糖などの有機化合物に変換して体内に蓄積する。枯れて分解されると、炭素は土壌に移行する。植物は炭素の循環プロセスに欠かせない存在だ。中でも森林は海に次ぐ大きな炭素吸収源として知られているが、実際にどれほどの炭素が蓄積されているかは正確に把握されていない。

樹木の重さが分かれば炭素量は正確に推計できるが、1本ずつ測定するのは気が遠くなる仕事だ。これまでは特定の地域の木の高さや太さを測定するサンプリングをしながら、上空からの画像を使って拡大推計してきたが、近年、波長の長いレーダーを搭載した衛星を活用することで、樹木の枝や幹を直接的に捉えられるようになった。

しかし、この長波長レーダーの周波数帯は、米国で大陸間弾道ミサイルを探知するために利用されており、互いに干渉すると安全保障上の問題が生じる。このため、米国と欧州の上空ではレーダーのスイッチを切らなければならない。ただ、米国や欧州ではこれまでの手法での測定が比較的進んでいる。この手法がアマゾンのジャングルのような未測定の土地で利用される意義は大きい。

炭素量測定の次の標的は永久凍土だと言われる。地球温暖化により融解すると、凍結されていた有機物が分解され、メタンやCO2が大気中に放出されることが懸念されている。一方、将来の気候変動を予測するモデルでは永久凍土の取り扱いは簡略化されており、大きな不確定要素となっている。さらなる技術的なブレークスルーに期待したい。

※本記事は、2025年5月13日付の物流ニッポン新聞に掲載されたコラム「ちょっといっぷく」に掲載されたものです。物流ニッポン新聞社の許可を得て転載しています。

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