世界の労働者の48%が悩むバーンアウト “燃え尽き”を防ぐ対策
それまで熱心に仕事をしていた人が、突然やる気を失ってしまう「バーンアウト」。日本語では「燃え尽き症候群」とも呼ばれ、従業員の生産性を低下させ、離職リスクを高めるやっかいな「病」だ。BCGが行った調査によると世界の労働者のおよそ半数が現在、バーンアウトに悩んでいるという。企業はどのような対策を講じれば良いのか。
職場におけるインクルージョンがバーンアウトを半減させる
BCGは、日本を含む8カ国、11,000人の労働者を対象に、バーンアウトと職場のインクルージョンとの相関関係を調査した。その結果、回答者の48%が現在バーンアウトに悩んでおり、特に女性やLGBTQ+、障がい者、デスクレスワーカーはバーンアウトを経験した割合が最大26%高いことがわかった(図表1)。
一方、従業員が職場でインクルージョンを感じると、バーンアウトに悩む割合が半減するという結果も出ている。図表1を見ると、インクルージョンの実感が最も高いグループ(上位25%=Q4)は、インクルージョンの実感が最も低いグループ(下位25%=Q1)に比べ、「バーンアウトを感じる」と回答した割合が63%から31%と半減しており、バーンアウトとインクルージョンに密接な相関関係があることが明らかになった(図表2)。
企業は従業員のバーンアウトを防ぐため、職場のインクルージョンを高める施策を検討することが急務となるだろう。
インクルージョンを実感させる4つ要素
調査によると、従業員のインクルージョンの実感に最も影響を与える要素は、 以下の4つであることがわかった。
●直属の上司との心理的安全性
BCGの調査から、従業員が上司との間に心理的安全性を感じると、インクルージョンの実感が向上することが明らかになっている。また、心理的安全性が担保されたチームは、メンバーのモチベーションが高く、離職率が低くなる傾向がある。
●上司や先輩社員によるサポート
職場に上司や先輩社員によるサポーターがいることで、従業員は自身のキャリアを振り返り、発展させることができる。またサポートを受ける過程で、上司や先輩社員と深いつながりを持ち、自身が評価され、尊重されていると感じることができるようになり、これがインクルージョンの実感につながる。
●公平で平等な成功の機会
経歴やアイデンティティに関係なく、誰もが公平かつ平等に成功するチャンスがあると感じられる環境では、従業員もまた、キャリアへの影響を恐れることなく、ありのままの自分でいることに安心感を持つことができる。
●従業員のニーズに対応した会社サポート
会社のサポートの中には、勤務時間の柔軟性や、自己研鑽への支援、メンターシップ・プログラムなど、業務に関係するものや、育児や通勤に関するものも含まれる。企業は従業員のニーズを正しく理解し、そのニーズを満たす方法を模索することが求められる。
企業はこの4つの要素に焦点を当て、従業員と適切なコミュニケーションを図り、職場における取り組みを見直すことで、従業員のインクルージョンの実感を高め、バーンアウトを減らすことができる。レポートの共著者でBCGのマネージング・ディレクター&パートナーのガブリエル・ノヴァーチェクは次のようにコメントしている。
「インクルージョンへの取り組みで重要なのは、継続的に従業員の声に耳を傾け、彼らが抱える課題と向き合うことだ。インクルージョンを高めるには、従業員からの要望に対応することと、上司との日常的なやり取りを確保することの両方が重要だ。インクルージョンを高めるために適切な対策をとることで、従業員のバーンアウトに関連するコストを低減し、従業員の企業へのエンゲージメントを高め、貴重な労働力を確保することにつながる。」
■調査資料
「Four Keys to Boosting Inclusion and Beating Burnout」
2023年10月に、日本を含む8カ国、約11,000人のパートタイムおよびフルタイムの従業員を対象に従業員意識調査を実施。
・ 実施時期: 2023年10月
・対象: 従業員数500人以上の企業に勤務する パートタイムおよびフルタイムの従業員約11,000人
・ 対象国: オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、インド、日本、英国、米国の8カ国