アフラック流「生成AI活用術」の独自性 システムの汎用性より“成果重視”の真意とは
アフラック生命保険取締役専務執行役員CTO CDIOの二見通氏(左)と、ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター&シニア・パートナーの高部陽平氏
アフラック生命保険が、経営や事業への効果の獲得にこだわった生成AIの活用を進めている。サポートしているのはボストン コンサルティング グループ。同社は“実用的”なシステムや仕組みをどう構築していったのか。生成AIの真価を引き出す秘訣を探る。
※本記事は2024年6月24日公開 ダイヤモンド・オンラインタイアップ広告の転載です。
──アフラック生命保険は、2023年12月に生成AI(人工知能)を活用した業務支援システム「Aflac Assist」の本格運用を開始しました。ボストン コンサルティング グループ(BCG)と二人三脚で徹底的な業務効率化に取り組んでいるそうですね。
二見通・ アフラック生命保険取締役専務執行役員CTO CDIO お客さまと代理店に対するサービスの向上と社内業務の効率化を目的とした、デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の一環です。
実を言うと、生命保険会社は金融業界の中でもデジタル化が遅れている業態だったと思っています。例えばIoT(モノのインターネット)を駆使しようにも、現時点ではIoTを活用できる機会が限られる。モノに関する商品も扱っていません。
しかし、諦めるわけにはいかない。特にデータ活用は今後のビジネス発展の鍵です。サービスの向上、営業活動の効率化のみならず、業務プロセスの変革においても大変重要です。
現在、私たちは日本で事業を始めて以来、50年かけて構築してきた業務プロセスを抜本的に見直しているところですが、当社が保有する大量のデータと生成AIの活用によって、ここでも業務改革がかなり進展するのではないかと期待しています。
高部陽平・BCGマネージング・ディレクター&シニア・パートナー 生成AIは従来のAIとは異なり、入力した文章をそのまま処理して回答することができます。
お客さまへの商品のご案内にしても保険金の支払い査定にしても、保険業務はテキストデータや定性的な情報を基に微妙な判断を人間が下すことで成り立ってきた面が大きい。そのため生成AIは保険業務と親和性が高く、保険ビジネス全体を大きく変える可能性を秘めています。
加えてアフラックの生成AI活用は、効果が出る業務をしっかりと特定し、将来的にどんなことまで行えるようにするか明確なビジョンを描いてシステムを構築している点が特徴的です。
──効果ですか。言われてみると、生成AIは活用できただけで満足してしまいがちです。
DXに必要な「攻め」と「守り」とは
高部 私たちはさまざまな企業の生成AI活用をご支援していますが、多くの場合、「誰もがとりあえず利用できるシステム」を目指そうとします。しかしそのアプローチは、実験的に生成AIを使う段階では意味があるのですが、経営や事業への効果は十分に得られません。
ボストン コンサルティング グループ
高部陽平
マネージング・ディレクター&シニア・パートナー
たかべ・ようへい/IBMビジネスコンサルティングサービス(旧プライスウォーターハウスクーパース)を経て2005年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。独ミュンヘン・オフィス勤務やBCGジャパンのデジタル専門組織立ち上げなどを経験。近年は保険グループのグローバルリーダーとして、保険・金融業界のデジタルトランスフォーメーションに集中的に取り組む。
二見 生成AIの活用に限らず、DXを推進するには「攻め」と「守り」が非常に重要です。
私たちで言えば、守りの方は、生命保険会社としての責任を全うできる安定的なシステム稼働の実現や、盤石なセキュリティー体制、AIガバナンスの整備を指します。つまり「金融機関としてのトラスト」を確実なものにするということです。
高部 そうですね。生成AIのシステムをどうセキュアに作るかというインフラ整備と、アフラックの独自データや個人情報の“使用基準”の設定が必要です。
二見 はい。安全なシステム環境の構築はもちろん、システムを正しく使い、情報漏えいなどを防ぐための、ガイドラインの策定や社員教育などにも力を入れています。
一方、企業として生成AIの活用を進める以上は、効果をしっかりと出せるような攻めの仕組みの構築も重要になります。だからこそ私たちは、各部門の業務の進め方を踏まえ、費用対効果が大きく出そうな部分をターゲットに据えて、生成AIの活用を戦略的に進めることにこだわりました。
──具体的に、どんな業務への活用に特化したのですか。
二見 現在は、三つの業務サポート機能があります。一つ目は、日常業務における社内情報の検索や資料の要約などのサポートを行う「業務アシスト」です。対象ユーザーは全社員ですが、特に監査部門やコーポレート部門で積極的に利用されています。
二つ目は、マーケティングやプロモーションに関する資料の作成、提案話法の確認などをサポートする「営業活動アシスト」です。営業・マーケティング部門向けのメニューでは、企画書のひな型・骨子の作成が可能です。
そして三つ目は、代理店向けコールセンターである「アソシエイツサポートデスク」のオペレーター業務をサポートする「商品・事務問い合わせアシスト」です。代理店から問い合わせを受けたオペレーターが、問い合わせ内容に応じて約款や商品マニュアルなどを検索し、回答を作成することを支援します。
この6月には一部代理店に対し、「代理店用生成AIチャット」の展開も始めていますし、将来的にはお客さま向けの生成AIサービスもご提供したいと考えています。こうした私たちの構想の実現を目指し、BCGと各種施策に取り組んでいます。
──BCGはどんな支援を行っていったのですか。
高部 大きく三つあります。どこで効果を出し、その効果をどう拡大していくか――すなわち、二見さんが言及された攻めの仕組みの構築支援が一つ。アフラックのビジネス上の課題を解決するための、システムの設計・実装がもう一つ。最後の一つが、Aflac Assistを確実に使っていただくために現場を変える、業務・オペレーションの設計とトレーニング支援です。
二見 BCGは、DXについてもテクノロジーありきで提案することがない。そこに大きな信頼を置いています。グローバルでの保険業界の動向も加味し、私たちのビジネスの「今後のあるべき姿」を共に考えながら、それを実現するための手段として、生成AIを共に検討してくださる。
また、今回はシステムの設計・実装まで担っていただいたのですが、BCGのデジタルケイパビリティの高さにも驚かされました。
高部 今、BCGには日本全体で1000人規模のコンサルタントがいるのですが、そのうち300人程度がテクノロジーをサポートできる人材です。データサイエンティストも数十人いる。私たちの目的は企業・事業変革のサポートですが、そのために必要ならばプロダクトの設計・実装も行うスタンスです。
Aflac Assistであれば、今後のあるべき姿に向け、各業務とデータの使われ方がどう変わっていくか見越した上でプロダクトを構築する必要がありました。そういった“さじ加減”が求められる箇所は、私たちのチームが自ら実装に動いています。
二見 しかも、新たにリリースしたサービス(システム)の使用率を含め、数値目標をしっかりと設け、その達成に一緒に取り組んでくださいました。BCGに対して強く感じるのは成果へのコミットメントです。変革をやり切る意志を感じました。
アフラック生命保険
二見 通
取締役専務執行役員CTO CDIO※
ふたみ・とおる/旧アリコジャパン、旧AIGエジソン生命、米メットライフ、三井生命保険(現大樹生命保険)を経て2015年アフラック(現アフラック生命保険)入社。いずれの会社でも最高情報責任者などとしてシステム・業務改革を率いてきた。近年はデジタル技術を駆使し、新たな顧客サービスの創出やエコシステムの構築などにも積極的に取り組む。
※CTOはチーフ・トランスフォーメーション・オフィサー、CDIOはチーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサーの略
部門によっては使用率100%達成
──実際のところ、Aflac Assistの効果のほどは。
二見 24年4月時点で、全社員の約50%が使用しているという成果が出ています。コーポレート部門の使用率は70%以上あり、監査部門では100%に達しています。業務の特性上、部門によってばらつきはありますが、使用率は毎月上昇しています。
業務効率化の定量的な効果も確認できており、コールセンターのオペレーターの応答時における資料検索時間は、生成AIシステムの活用によって従来比約30%の短縮を実現しました。社内アンケートでは、社員による資料作成時間についても、同30~40%短縮しているという結果が出ています。
想定通り、いや、それ以上の成果です。Aflac Assistは他のツールに比べて社内への浸透速度が速い。
こうした業務の効率化によって、営業や新商品の開発に費やせる時間を創出し、お客さまに向き合う時間をもっともっと増やしていきたいです。
高部 誰しも、創造的な仕事がしたいのではないでしょうか。生成AIの活用などのDXをサポートし、企業に必要な変革の実現に貢献していきたいです。