10~20代の動画配信サービス利用時間はテレビ視聴の2倍――メディア消費者行動調査

若者のテレビ離れが指摘されて久しい。Amazon Prime VideoやNetflixなどの定額制動画配信サービス、YouTubeをはじめとする広告型動画配信サービスなどメディア利用の選択肢が多様化するなか、消費者はどのようにコンテンツに触れているのだろうか?その行動の実態を、BCGが日本全国の15歳から69歳までのメディア利用者4,400人以上を対象に実施した「メディア消費者行動調査」から紹介する。

10代のテレビ視聴時間は60代の半分

テレビ(地上波・衛星放送)の1日当たりの平均利用時間は、60代は平均2.1時間であるのに対して、10代は1.2時間と半分程度だった。一方、インターネットを利用した動画視聴時間(定額制動画配信サービスと広告型動画配信サービスの合計)は、60代0.9時間、10代2.3時間と、若年層ほどテレビよりネットの動画配信サービスを選ぶ割合が高いことが分かった。特に10代や20代は、動画配信サービスの視聴時間がテレビ視聴時間の約2倍となっている。

その結果、動画コンテンツ全体(テレビ+動画配信サービス)の視聴時間は20代がもっとも長く、続いて10代と、若年層のコンテンツ視聴自体にかげりがあるわけではない。ここに、放送事業者がこれからの時代を生き残るヒントがあるのではないだろうか。

スポーツはリアルタイム、ドラマは動画配信サービス

次に、カテゴリー別の利用チャネルを見ていこう。ドラマの視聴は全年代で動画配信サービスを利用する人の割合が高かったのに対して、スポーツはリアルタイムのテレビ視聴をする人が多かった。

また、アンケート調査後に詳細調査として行ったインタビューでは、スポーツを見る際の使い分けとして、動画配信サービスで特別解説を聞きながら、リアルタイムのテレビでは高画質・大画面による臨場感を味わいたいという消費者もいた。コンテンツの楽しみ方はこのように多様化・複雑化している。

日本では動画配信サービスの解約検討率が高い

若い世代はテレビよりネットの動画配信サービスを好むことは分かったが、動画配信サービスの課題は何だろうか。調査では、契約中の定額制動画配信サービスについて、解約しようと思っているかどうかを聞いた。すると、大手であるNetflixであっても契約中の人の27%が解約を検討しており、米国で行った同様の調査の結果(6%)と比べかなり高い数字となった。

大手のサービスに限れば解約検討率が低い米国と比べ、日本では大手であろうとなかろうと、高い解約検討率を示している。この背景について、調査チームは、米国ではケーブルテレビ料金を月額120~150ドル前後で契約することが多いのに対し、日本では無料で地上波の質の高いコンテンツを視聴できることがあると考えている。

これらを踏まえ、放送事業者は、事業の方向性をどのように考えるべきだろうか。今回の調査を担当したBCG東京オフィスのテクノロジー・メディア・通信グループ日本リーダー、桜井 一正は2つの選択肢を提示する。1つはデジタル流通網の強化をさらに進め、コンテンツプロバイダーとしての地位も維持すること。これにより、変化の激しい放送通信環境に対応し、視聴者へのコンテンツ提供を確保できる。もう1つは、デジタル流通網からは手を引き、コンテンツ制作に特化すること。競争が激化するなかでも、魅力的なコンテンツを制作し続けられれば、グローバル市場での存在感を高められる。

調査レポート:第1回メディア消費者行動調査(2023年7月)

調査概要:
日本全国の15~69歳の男女を対象にインターネットで実施。
アンケート: 回答者4,406人のうち、有効回答があった3,750人
インタビュー: 7人