日本企業がつまずく組織のグローバル化 鍵は「ガバナンス設計」にあり

BCGが考えるガバナンス設計の“3種の神器”とは、

1. 意思決定役割分担(OVISフレーム)
2. 重要ポジションの職務記述書(Job descriptions)
3. 会議体の設計(Committee structure/charter)

である。この3つが定義され、それぞれが有機的に関連付けられていれば、グローバル組織運営の一定の礎が構築できていると言ってもよいと思う。

BCGが考えるガバナンス設計の3種の神器、意思決定役割分担(OVISフレーム)、重要ポジションの職務記述書(Job descriptions)、会議体の設計(Committee structure)を示している。この3要素を押さえることで、グローバル組織運営の不全に対処できる。

グローバルガバナンスにおける「拒否権」

詳細を説明する前に予言しておくと、おそらく皆さんの企業は次のパターンが多いのではないか。「1. 意思決定役割分担」は、明文化したものは存在しない、もしくは日本だけに適用されている規定のようなものが存在する。「2. 重要ポジションの職務記述書」は、欧米の海外子会社には存在するが、本社には存在しないか異なるフォーマットで管理されている。「3. 会議体の設計」は、規定されているが、会議体ごとの議題の分担や使い分けは不十分で、重複がある。いかがだろうか。

それでは改めて“3種の神器”について解説する。

1. 意思決定役割分担(OVISフレーム)

BCGが開発したフレームであり、「オービス」と読む。組織の重要な意思決定項目に対して、誰がOwn、Veto、Information、Supportするのかを定義したもので、これまで多くの日本企業にこのフレームを適用してきた。

Own: 意思決定項目の起案者であり、実行までの責任を担う
Veto: どうしてもリスクがある場合に、意思決定を差し止める権限を持つ
Information: 意思決定をする過程で必ず意見を収集しなければいけない相手
Support: Ownの実働としてサポートを行う

特に特徴的なのは、OwnとVetoの定義である。冒頭の製薬企業にも、この仕組みを導入してもらった。Ownについては、単に決定をする人ではなく実行責任者、つまり意思決定の結果に最終的に責任を持つのが誰であるかを定義することが重要である。日本事業の今年度計画についてなら、その実行に責任を持つ日本事業ヘッドがOwnとなる。