日本企業がつまずく組織のグローバル化 鍵は「ガバナンス設計」にあり

それは、①海外の状況の見える化が不十分、②そのために、適切な関係者・スピード・質での意思決定ができていない、という点である。

①についてよく見られるのは、「単年計画として各地域の売上や利益などの数字面、またそれを下支えする事業・行動計画は本社側でも把握している。しかしそれは机上のもので、数字の蓋然性、およびアクションがどの程度進んでいるのかという実態が見えていない」という状況だ。よって、本社がどこまで口を出すべきなのかを判断できなくなっている。

②については、両極端の事態が起こりがちである。1つは、見える化されていないために遠心力が働いてしまい、海外事業部門が独自に判断、意思決定しているパターン。もう1つは、見える化の粒度が適切でないため、本来は地域レベルで決めてもよい議題がグローバル経営会議に集まってしまい、玉石混交の議論を1つあたり5分でただただ消化しているパターンである。

日系企業のグローバル経営会議は、全機能・地域から網羅的に責任者が呼ばれ大人数になる傾向にあり、なおさら流れ作業のように議題を消化するしかなくなるのである。

こうした事態の真因として、「ガバナンス設計の不在」を指摘したい。

組織のグローバル化を議題にすると、「組織の形はどうするか」「そのポストに誰が就くか」という議論が始まりがちである。組織構造は変化が分かりやすいうえに、誰もが自分の経験から意見を述べられるので盛り上がるのだが、それは「箱」の議論でしかない。組織運営の本質は「どのようにガバナンスを効かせたいか」に他ならない。そこがしっかりしていれば組織の箱は、極論すると、各社の文脈に合わせていればどのような形でもいいのだ。

経営企画部の孤軍奮闘で綱渡り

ここでガバナンスとは、「何の意思決定を、誰を責任者として、どのように分担・連携して決定するのか」であると定義する。これが設計されていない結果として必要十分なデリゲーション(権限移譲)やモニタリングが行われず、海外事業の実態が分からない、グローバル経営会議なるもので何でもかんでも議論する、といった前述の様相を呈している企業が多い。

ついでに言うと、そうしたガバナンス設計が不十分な企業では、経営企画部の孤軍奮闘を目にすることがしばしばある。海外事業を管理するために、経営企画部があまりに広範囲の情報収集や計画調整、経営会議の運営を担当しているケースである。さらには、それが一定の経企メンバーに属人化していることも珍しくなく、ガバナンスとしては綱渡りな状態になっている。

また、海外側からはそもそも「経企」という存在が分かりにくく、重要性を認知されないこともある。その背景には、日系企業は各コーポレート機能の業務範囲が限定的という現状がある。本来であれば、人事部門がより戦略的な人員管理をグローバルレベルで行ったり、財務部門が経営計画の管理を一定程度担うことができるはずで、欧米企業にとってはそうした役割分担が分かりやすいのだが、日本企業ではその役割の多くを経営企画部がカバーしている実情がある。

さて、グローバル組織運営がうまくいかない真因として、「ガバナンス設計の不在」を挙げた。この対処法として、BCGが考える“3種の神器”を提示したい。