「気候変動問題により行動を変えた」消費者はわずか2割――サステナブル意識調査

ボストン コンサルティング グループ(BCG)が日本の消費者を対象に行った最新の調査結果によると、消費者の環境に関する意識は3年前と比べ大きく変化しておらず、行動変容にも停滞感が見られることが分かった。今回が8回目を数える本調査から、消費者の行動変容を促すためのヒントを探る。

地球温暖化や気候変動問題に興味があると答えた人は65%

調査は日本全国の15歳から69歳までの3,300人を対象に行った。「地球温暖化・気候変動問題を知って行動を変えた」と回答した消費者は、2021年から2023年にかけて、15%から19%へと緩やかに増加してきた。しかし、今回2024年1月に実施した調査では18%にとどまり、消費者の環境意識に停滞感が見られる(図表1)。「地球温暖化・気候変動問題に興味がある」との回答も65%で横ばいだった。

「地球温暖化/気候変動問題」に対する意識はほぼ横ばいであることを示す図

ただ、年代別に見ると10代の「興味がある」と答えた割合はこの1年間で5%ポイント上昇した(図表2)。気候変動問題に関する情報収集源として38%が学校の授業をあげており、学校教育による環境意識の醸成が進んでいるといえる。

10代の「地球温暖化/気候変動問題に興味がある」割合はこの1年間で57%から62%と、5%ポイント増加したことを示す図

環境負荷の少ない商品の購入に踏み出せない理由は「情報不足」が56%

「環境負荷の少ない商品を買いたい」と回答した消費者は全体の66%である一方、そのうち「環境負荷の少ない商品を選んでいる」と回答したのは約半分の31%だった。この「環境負荷の少ない商品に対する購入意欲はあるが、行動に踏み出せていない」層にその理由を聞いたところ、最も多かったのは「どの商品が環境負荷の少ない商品なのかよくわからないから」の56%、次いで「価格が高いことが多いと思うから」が34%だった(図表3)。

環境負荷の少ない商品の購買に踏み出せない層の最大の理由は情報不足であることを示す図

COP28の認知率は直近3回のCOPの中でも最低の42%

2023年12月に行われた、第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)の認知率は42%で、COP26、COP27、COP28の直近3回の中で最低だった。認知経路は過去と比べて大きな変化は見られず、報道などの情報の減少により、情報に接触できなかった人が増えた可能性が考えられる(図表4)。

COP28(第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議)の認知率は、過去3回のCOPの中で最低の42%であることを示す図

「SDGs」の認知率は約9割、「カーボンニュートラル・脱炭素社会」は約8割

一方で、サステナビリティに関するさまざまな言葉について知っているかを聞いたところ、「SDGs」の認知率は89%、「カーボンニュートラル・脱炭素社会」は80%と、社会に広く浸透してきていることがわかった。また「生物多様性の保全」は61%、「炭素税」も60%となり、サステナビリティに関する具体的なテーマへの関心も高まっていることがわかる(図表5)。

「SDGs」の認知率は約9割、「カーボンニュートラル・脱炭素社会」の認知率は約8割で広く社会に浸透。次いで高かったのは「生物多様性の保全」、「炭素税」で、約6割の認知率であることを示す図

調査を担当したBCGのプリンシパル、伊原彩乃は、「今までのような『環境に良い』『サステナブル』『エコ』といった漠然としたメッセージの訴求を続けるだけでは、現状以上の消費者の行動変化は期待できない。消費者の行動変容をもう一段進めるためには、カーボンフットプリント1や環境ラベル2のような、より具体的で定量的な情報が必要だ」とコメントしている。

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■ 調査資料
サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果
環境問題をはじめとしたサステナブルな社会の実現に関する消費者意識の変化を定点的、かつ長期的に観測する調査。態度変容の兆しやフックとなる情報・事象の把握、購買行動変化の兆しをつかむことを目的とし、2021年2月から調査を実施。

  1. 製品やサービスについて、原材料の調達から廃棄までに出る温室効果ガスの総量を数値化したもの(二酸化炭素相当に換算) ↩︎
  2. 製品やサービスなどの環境的側面を購入者に伝える文言やシンボル、図形、図表など ↩︎