【アースデー】食べるスプーンでソフトクリームのCO2削減

ソフトクリームを食べるときに使うプラスチック製スプーンを、コーンでできたスプーンに変えることで減るCO2排出量は――。

ミニストップが排出量算定、BCG支援の環境省事業で

製品の原材料の調達から廃棄に至るまでのCO2排出量を示すカーボンフットプリント(CFP)。ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、環境省から「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」1を受託し支援した。その参加企業のひとつでコンビニエンスストアチェーンのミニストップが、ソフトクリームのCFP算定結果を発表した。

「ソフトクリームバニラ」は、ミニストップの創業以来販売され続けている代表的商品だ。今回、原材料調達から生産、流通、使用を経て廃棄・リサイクルまでの全工程にわたるCO2排出量を算定し、スプーンがプラスチック製の場合とコーン製の場合を比較した。

コーン製への切り替えで3.5グラムのCO2削減

その結果、プラスチック製スプーンの場合のソフトクリームのCFP算定数値は251.4グラム(CO2換算)2、コーンでできた「食べるスプーン」の場合は247.9グラムと、食べるスプーンのほうが1個あたり3.5グラム排出量が少ないことが分かった。主に原材料調達・廃棄の工程で違いが出るためだ。原材料調達の部分では、石油由来のプラスチックに比べ、コーンのほうが原材料生産過程での排出量が少ない。廃棄については、ミニストップによると年間約44トン相当のプラスチック削減につながり、CO2排出を約121.88トン抑えることになる。

ミニストップは、2023年6月から全店でソフトクリームのスプーンをコーン製に切り替えた(アレルギー対応でプラスチック製スプーンの提供もしている)。また、小売りの責任として、流通段階の輸送の部分でのCO2削減を進めると共に、サプライチェーン全体にわたる削減を推進していくという(詳細はミニストッププレスリリースを参照)。

ミニストップの「ソフトクリームバニラ」と「食べるスプーン」の写真
ミニストップのソフトクリームバニラ。「食べるスプーン」は最後まで違和感なく使える(編集部撮影)

身近な商品のCFPの表示が消費者の選択の基準に

この事業の支援に関わったBCGのプリンシパルでカーボンニュートラル領域のエキスパート、伊原彩乃は、以下のようにコメントしている。「『環境によさそう』と思われている取り組みは以前からあったものの、定量化されていないことが多く、本当に環境に良いのかはよくわからなかった。例えばエコバッグは、使用回数によってはプラスチック製レジ袋のCFPの方が少ないという報告もある。

今回、コーン製スプーンのCFPはプラスチックスプーンよりも少ないことが明らかになり、ソフトクリームにおける脱プラがCO2排出量削減につながることが可視化された。ミニストップのソフトクリームをはじめ、本事業で支援した企業の身近な商品のCFPが算定されたことで、消費者に関心を持ってもらうきっかけになればと思う。将来的には、消費者が商品を選択する際、価格や品質、味などだけでなくCFPも判断要素の一つとなり、消費者が自信をもって環境に良い商品を選択できる世の中になっていくだろう」

環境負荷の少ない商品に踏み出せない理由を示した図
BCGの調査でも、環境負荷の少ない商品の購買に踏み出せない理由として「どの商品が環境負荷の少ない商品なのか、よくわからないから」を挙げている人が多数

BCGは、2022年度、2023年度と本事業を受託し、参加企業を支援してきた。2023年度はミニストップのほかに甲子化学工業、チヨダ物産、ハースト婦人画報社、マルハニチロが同事業に参加した。

他の参加企業や算定結果はこちらのプレスリリースを参照。
BCGの支援する環境省事業を通じ、先進企業で製品・サービスのCO2排出量の可視化が実現(2024年3月18日)
「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」参加企業を決定(2023年8月24日)

  1. 本事業では環境省から委託を受けたBCGが事務局となり、参加企業による自社製品・サービスのカーボンフットプリントの算定および表示・活用を支援した。また、支援においてはBCGからの再委託先であるソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社からの協力も得る形で進めた。なお、本事業では、経済産業省・環境省より公表された(別冊)CFP実践ガイドで解説した「他社製品との比較を想定しない、自社ルールによる算定」やその表示・活用のモデルをつくることを目的とし、BCGが各企業の取り組みを支援した ↩︎
  2. 本記事のグラム表記はすべてCO2換算(CO2eq) ↩︎