リーダー就任最初の100日ですべきこと【BCGクラシックス・シリーズ】

5. 自分自身のクセに注意し、直すこと

あなたご自身がビデオで撮られ、15メートル幅の大スクリーンに映し出されていると想像してみてください。リーダーとしての一挙手一投足が議論と解釈の的になります。あなたが何時に会社に到着するか、廊下で社員とどのように接するか、自分の時間をどう配分しているか、どのくらい徹底的に準備して会議に臨むか、など。あなたが変えたいと思っている企業文化の側面を1つか2つ取り上げ、これを迅速に変えることによって、改革に対するあなたのコミットメント(覚悟)の強さを示すべきです。ただ、今ある問題を解決することにより、将来の問題解決の検討の幅を狭めてしまうリスクもありうるので、注意して進めてください。

6. 経営再建途上では、優先プロジェクトを決めるまで、自由裁量の支出をすべてストップすること

キャッシュ・イズ・キング。主要プロジェクトに資源を活用できるようにすることがきわめて重要です。業績が不調な事業があれば、広告宣伝、新製品開発、業務の改革などを含め、すべての裁量支出を再考すべきです。いかなる組織の予算にも、まったくリスクなしに削減や廃止できる項目が多数あります。多くの場合、あまり重要ではない目的に金が使われているため、最も重要なプロジェクトの資金が不足しています。優先プロジェクトを厳選したリストを作成し、それらのプロジェクトに充分な資金が回され、実行状況が注意深くモニターできるようにしてください。

7. 自社の事業で利益がどのプロセスで生まれているかを見きわめ、カギとなる部分に焦点を絞り、簡単な指標で報告させること

自社のどこから金が生まれ、どこに流れているかを把握することは、難しい場合があります。今日経営者が厳しい監視の対象となっていることを考慮すると、会社の収益計上の方針をすべて理解しておく必要があります。CEOは往々にしてこの仕事をCFO(最高財務責任者)に委任することが多いですが、それは大きな間違いのもとになる恐れがあります。ビジネスの収入計上がどう行われているかをじかに理解すると、短期的な売上変動や別枠の資金プールなどの隠れたリスクと機会を発見する一助になります。また社員と経営陣がビジネスの現状を評価する際、モノサシとなる簡単な指標を特定する上でも役立ちます。すべての企業には収益を生み出すエンジンがあります。あなたの会社の収益エンジンを発見し、その成長を促すことです。

8. 負の遺産を解明し、速やかに処理すること

あなたが、前任者たちの過ちを消却する機会は一度しかありません。こうした過去からの負の遺産と課題を発見し、すぐに処理してください。就任後初めて知る不愉快な「遺産」、たとえば巨額の経年在庫、償還の積立金不足、未解決の顧客トラブル、長期訴訟等々が、数字の裏に隠れています。重大な簿外債務、たとえば前経営陣が取り交わした約束なども解明する必要があります。これらを処理する場合のコツは、すべてをテーブルにのせて表に出した上で、将来に向けて熟慮した原則を策定することです。

9. 見えないチャンスと脅威を感知する能力をつけること。必要な場合は応急措置を施すこと。すぐできる「クイックヒット策」のリストを常に更新していくこと

クイックヒット策には、より収益性の高い製品の販促キャンペーン、主要顧客との契約拡大交渉、弱い部門の新製品開発の抑制、競合の低コストに対抗するための総合的な生産性向上プロジェクトなどがあります。ただ注意して頂きたいのは、ご自分が取り組んでいることを示すため、すべての問題を一遍に解決しようとするワナに陥らないことです。オペレーション上の詳細事項の泥沼にはまり込んで、全体像を見失うリスクがあります。

10. コミュニケーションのマスタープランを作り、一貫してそれを実行することで、株主の期待をマネジメントすること

「株主のマネジメント」は最も重要な仕事になります。株主の期待をうまくマネジメントし、「この新リーダーは約束した時期になれば結果を出すのだ」という信頼を醸成する方法を学ぶことです。リスクの内容とリスク回避のためにとった施策に関する情報を、絶えず株主に提供することです。経営チームメンバーが対外的に話す際は、必ず首尾一貫した事実・結論に基づいて話すことも必要です。

正当なことかどうかは別として、企業(および国)のリーダーは、就任後の最初の100日間、厳しく監視されます。最初の四半期で成功すれば、さらなる成功が約束されるだけでなく、目標をさらに推し進める助けともなります。というのも、誰もが勝ち馬に乗りたいと思っているからです。最初の100日間の優れたパフォーマンスは、その後の1,000日間の基調を決定することになるのです。

原題:Assuming Leadership: The First 100 Days

著者(肩書は当時)
Patrick Ducasse BCG パリ・オフィス シニア・パートナー&マネージング・ディレクター
Tom Lutz BCG ダラス・オフィス シニア・パートナー&マネージング・ディレクター

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