日本支社長のダボス会議レポート③――日本・アジアの存在感を高める必要性
ダボス会議が閉幕した。総括すれば、今年の会議は、前回触れたAIに加え、地政学、気候変動とサステナビリティが3大テーマになった。
地政学は、ウクライナと中東の動向に加えて、今年は選挙の年であることが大きな話題となっていた。すでに1月に台湾総統選挙があり、2月にインドネシア、3月にロシア、11月には米国で大統領選挙が予定されている。50近くの国で、20億人が選挙に関与する年になるという。
特に米国の結果がどうなるかで世界の地政学的リスクも大きく変わるため、ダボスでもビジネスリーダーとの会話でこの点への関心は極めて高かった。こうした状況のなかで企業が主体的にできることは限られるが、自らのビジネスにおいて想定されるシナリオを幅で考え、状況の変化に機敏に対応できるレジリエンス(強靭性・回復力)を構築しておくことが重要だろう。
気候変動・サステナビリティについては、昨年ドバイで開かれたCOP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)の流れを受けて、各国政府や国際的な政策と民間企業でどのように協調して脱炭素を実現していくか、活発な議論がなされているのを多くの場面で見た。あるアジアのエネルギー業界のCEOが、化石エネルギーの代替手段に関して、COPでは議論しつくせなかったビジネス面での掘り下げを、ダボスで他国のプレーヤーと展開できることを期待してこの地に来たとのコメントが印象的であった。BCGはWEF(世界経済フォーラム)とともに、企業と政治のリーダーが何ができるかに焦点を当てたレポートを公表している。
前回触れたAIのガバナンスも含めて、これらのテーマは、1社で解決策を見出すのは困難で、民間の中でのアライアンスや協調、さらには政府を巻き込んでの動きを高めないとなかなか解が見出せない。会期中、各国のビジネスリーダーは、それぞれのアジェンダ(課題)を持って、さまざまなセッションに参加しているのが印象的だった。会議が1月に開催されるのは、この時期に集まることで、自分の設定した今年のアジェンダが正しいか、さらに中身を深める要素があるのかを確認できることがあるのだろう。
この国際的な枠組みを議論する場において、アジアや日本の立ち位置が気になる。ここ数年のアジアからの参加者は全体の15~20%の間で大きな変化はない。これまでの歴史的な経緯や地理的な要件から、欧州や米国のプレゼンスが大きいが、上記の問題群は日本やアジアの国々も積極的に参加して声を上げていく役割を担うべきである。アジア、とりわけ日本がこういう場でもっと存在感を高める必要性を強く再認識した。
現地でBCGのアジア太平洋地区の責任者を務めるニラージ・アッガルワルと意見交換したビデオも収録した。ぜひご覧ください。