日本支社長のダボス会議レポート②――生成AIのリスクにどう向き合うか

今回のダボス会議のキーテーマの一つが生成AIだ。昨年の会議の時点では、ChatGPTが出てまだ間もないタイミングで、「すごそうだけど、本物かどうかは分からない」「まだ様子見の段階」という声が多かった。

今年は、これが大きな波であると参加者も強く認識し、どう取り組むべきかに議論もフォーカスされている。

ただ、一方的に礼賛する雰囲気ではなく、他のテクノロジー同様、ポジティブとネガティブの両面を見ていこうとの主張が大半であるのが印象的だ。

生成AIを活用することで生産性を劇的に高められる可能性は皆が認めるが、それをどう安全に活用していくか、コンプライアンスや情報の信ぴょう性をどう担保するか。本来的には国境を越えて対応すべき課題だが、主要国は自国(とその企業群)を有利にすべく独自のルールを展開したいという思惑もあり、悩ましい。

会議のセッションも、責任あるAIをどうガイドしていくか、AIにかかるガバナンスをどう設定するか、そもそもAIに本当にガバナンスを設定できるのかなど、負の側面をどのように制御するかをテーマにしたものが数多く設定されている。

生成AIをビジネス上のドライブにしたいテック企業の多くも、この問題をクリアしていかないと、本当の意味での成長が難しいことを理解しており、真摯に向き合わなければいけないという真面目なスタンスが感じられた。

こうした課題について、ソニーグループの北野宏明CTO(最高技術責任者)に当地で話を聞いた。北野CTOは、「ソニーはクリエーターのための会社であり、クリエーターはいずれ非常にクリエイティブな方法で生成AIを使い始めると思う。生成AIで人間の創造性が失われると心配する人もいるが、私はそうは思わない。人間の創造性を信じている」とポジティブな面を語ってくれた。

一方で、負の側面についても深く考えていて「製薬業界の臨床試験のような検証プロセスがまだ生成AIでは確立されておらず、責任あるAIについての法的なガイドラインなども必要だろう」と話している。

ソニーグループ北野宏明CTO(右)と佐々木の対談動画

OpenAIのサム・アルトマンCEOもパネルディスカッションに登壇し、生成AIの課題などについて語った。生成AIの規制やガバナンスはこれからであり、その意味でもまだまだ黎明期、ただし、今後の発展可能性はすごいということは再確認させられた。

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BCGのクリストフ・シュヴァイツァーCEOが、CNBCのインタビューに応えて生成AIについて語っています(こちら)。
また、ダボス会議に合わせてBCGが世界の経営層1400人を対象に行った調査レポート『生成AIの可能性を利益に』もご覧ください。