「AI戦略の成否は自分の責任」日本のCEOの7割が自覚――BCG調査

※本記事のサムネイル画像はAIで生成したものです

企業におけるAIの取り組みは実証・試行段階を超え、本格展開の局面へと進んでいる。BCGの調査では、2026年のAIへの投資は前年比で倍増し、従来はCIO主導で進められることが多かったAI戦略が、いまやCEO自らが担う「CEOアジェンダ」へと移りつつあることが明らかになった。

BCGは、日本を含む世界16市場9業界、年間売上高1億ドル超の企業の経営層2,360人を対象にAIに関する取り組み状況を調査した。

調査に回答した企業は2026年に売上高に占めるAI投資額を平均で2倍に増やす計画で、その規模は売上高の約1.7%に達する(図表1)。また、回答企業の94%が、2026年中に成果が得られなくても、現在と同等かそれ以上の水準でAI投資を継続する意向を示した。ただし、業界によって投資水準には差があり、テック企業や金融機関は売上高の約2%をAIに投資する一方、産業財や不動産業界では0.8%にとどまった。

企業の売上高に占めるAI投資額の割合を示した図表。2026年、企業のAI投資は前年から倍増の見込み

AIはCEOの責任領域へ 日本では7割が「自身の立場を左右」

調査では、CEOの72%が「AIに関する主要な意思決定者は自分自身である」と回答した。この割合は前年比で2倍となっており(図表2)、企業変革の主導権が、CIOからCEOへと移っていることが明らかになった。特に日本では、自らが意思決定者だと回答したCEOの割合は88%に達した。

CEOがAIに関する意思決定にどの程度関与しているかの調査結果を示した図表。AIの主要意思決定を担うCEOの割合は前年から倍増し72%だった

また、調査に回答した日本のCEOのうち、70%がAI戦略の成否が自身の評価や立場に関わると考えていることが分かり、他の市場と比較して、この割合は最多だった(図表3)。

AI戦略の成否が自身の職の安定性に影響すると考えるCEOの割合を示した図表。日本のCEOの7割はAI戦略の成否が「自身の立場に関わる」と認識

「先駆型」のCEOが生み出す❝好循環❞

調査では、AIとの向き合い方に応じて、CEOを大きく3類型に分類している。

  • 先駆型(約15%): AIのROI(投資利益率)を確信し、大胆な投資や迅速なアップスキリングに取り組み、AIを中核に据えた変革を推進する
  • 実利重視型(約70%): AIの効果を確信し期待している一方、明確な価値とリスクの低さが確認できた場合にのみ投資する
  • 慎重型(約15%): AIの可能性は認識しているものの、その効果に対して確信が持てず、初期段階の慎重な投資にとどまっている

先駆型のCEOは2026年のAI投資の半分以上をAIエージェントに充てる見込みだ。また、業務プロセス全体にわたってAIエージェントを導入する可能性は、慎重型のおよそ2倍に上った。

こうした先駆型のCEOは、AIを最優先事項と位置づけ(図表4-①)、自身のAIに関する知見向上のために週6時間以上を費やしている(同②)。また、大規模な投資を行いながら(同③)、従業員のアップスキリングを実施し(同④)、AIについて測定可能なROIを追跡している(同⑤)。その結果、好循環を生み出しており、AIを体系的に導入した分野では、すでに生産性の向上、業務スピードの改善、そして意思決定の質の向上といった成果が報告されている。

先駆型のCEOが生み出す好循環を示す図表。先駆型のCEOはAIの重点化と投資の拡大、人材のアップスキリングを進めることで、好循環を生み出している

一方で、日本では、先駆型の比率が10%にとどまっており、他の市場と比較すると相対的に低い傾向が見られた。

BCGのデジタル専門組織BCG Xで日本における生成AIトピックのリーダーを務めるマネージング・ディレクター&パートナーの中川 正洋は次のようにコメントしている。「日本企業はAIを『重要な経営テーマ』にとどまらず、『CEO自身の命運を左右するテーマ』と捉えており、70%のCEOがAI戦略の成否が自らの職の安定性に影響すると回答している。グローバルでは72%のCEOがAIに関する主要な意思決定を自ら担っていると回答しており、この割合は昨年の2倍。CEOの役割はより明確になってきており、真の競争優位は、CEOが戦略・オペレーションの変革をトップダウンで進め、機能をエンドツーエンドで再設計し、新たな製品・サービスを創出できるかにかかっているといえる」

調査レポート: AI投資は経営の最前線へ——企業の取り組み調査(2026年1月)

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