社会課題解決を成長の原動力に――シニア・パートナー森田の眼

競争原理はかつて経済が発展する最大の要因だった。個別の企業が切磋琢磨し、経済的な豊かさの総和が増したのは間違いない。しかし、競争は過熱し、行き着くところでは効率が重視され、社会全体への還元が薄れる。豊かさの追求には限界があるのだ。こうした中で、企業は何を目指すべきか、本当に悩ましい。

こうした悩みに対し、社会課題の解決を経済価値につなげることを企業活動の根幹に据えるCSV(Creating Shared Value)経営の概念が出てきた。社会課題が深刻化すればするほどビジネスニーズが高まることになれば、効率重視の世界を回避できるかもしれない。しかし、社会課題が広範である一方、企業活動による貢献はあまりに狭く、説得力に欠けるように感じる。

社会課題の解決を成長の原動力にするなら、例えば食料、水、電池など社会課題を幅広く抱えるモノ・サービスで、生産から流通、消費、再利用までを「社会システム」として捉え直すことが重要だ。それは、これまでの競争の単位の「業界」から視野を広げることであり、複数の業界、官と民が協調して推進することでもある。

これらを推進する強力なリーダーシップはどうやったら生まれるのか。筆者の属するコンサルティング業界は「企業の医者」として、個々の企業に対し処方箋を書いてきた。しかし、複数の業界、官と民の協調をリードするのに当たり、関係者と議論し、構想を固め、リーダーを支援して実行を手助けするのにちょうど良い立ち位置にいるのかもしれない、と最近よく考える。

※本記事は、2024年12月13日付の物流ニッポン新聞に掲載されたコラム「ちょっといっぷく」に掲載されたものです。物流ニッポン新聞社の許可を得て転載しています。