日本企業がつまずく組織のグローバル化 鍵は「ガバナンス設計」にあり

日本企業がグローバル化するとき、課題となるのは何か。今回は特に組織・人材の切り口から、BCGの見立てを示したい。キーワードは「ガバナンス設計」である。組織設計、ではない。

ある日系製薬企業が、世界的に需要がある薬の自社開発に成功した。それまで売上の7割が日本市場向けだった同社が、向こう10年で海外比率が7割へと逆転が見込めるほどの画期的な開発だった。

一方で、製品の品質保証管理はグローバル横断で十分に行われていたとは言えず、米国FDA(食品医薬品局)から警告を受ける事態が発生した。グローバルの品質管理責任者が明確でないなど、ガバナンスの脆弱性も露見し、グローバルレベルでの改革が待ったなしの状況となった。そこで、BCGに相談があったのである。

組織のグローバル化にあたり、コンサルタントのような外部の力を借りてでも早急に解決しなければならない状況には、大きく3つのパターンが存在する。

1. 企業買収やグローバル製品の自社開発によって海外売上比率が急拡大しているが、その管理や運営について社内の整備が追いついていない。

2. 過去に買収した海外子会社の業績が低迷し、本社からテコ入れが必要になった。

3. 本社側から海外事業の実態が見えず、オペレーションやコンプライアンスにリスクがある、もしくはすでに発現してしまっている。

経験的には1~3の順で相談が多いが、上述の製薬企業は1と3の組み合わせである。足元で起きている問題は品質管理だったが、各機能でガバナンスが弱いままでは、せっかくの自社開発品の海外市場での価値創出やビジネス機会を最大化できないという危機感が、経営陣にはあった。

日系企業に潜む「ガバナンス設計の不在」

もちろん、こうした状況に陥る企業が何もしていないのかというと、そんなことはない。まがりなりにも地域横断で事業を管理し、単年あるいは中期の計画や戦略も立てている。にもかかわらず「うまくいっていない」と課題意識を持っている。

その課題意識はさまざまに語られるが、これまでの経験から大きく2点に集約されるように思う。