第14回 AIエージェントの「タダ乗り」 コンテンツ側の対策は

世界の皆さん、おはようございます、こんにちは、こんばんは。BCG Xの高柳です。2026年に入り、話題はすっかりAIエージェント一色ですね。

自ら情報を調べてまとめ上げてくれるエージェントは便利な一方で、コンテンツを売りにしている企業からすると「うちの記事、読まれずに“材料”として吸われてない?」という悩みも大きくなっています。実際、検索リンクをクリックしない傾向は進んでいるようで、各サイトの訪問数に対し AI側の取得量だけが増える構造が加速している状況です。今回はこの問題について、最新の対策動向を見ていきます。

この記事のポイント

①AIエージェントが大量のウェブコンテンツを巡回する一方、人間の訪問者が減ってしまう「タダ乗り」問題が深刻化

②対策は「ブロックする」「ルールをつくる」「お金を取る」の3段階で進化中

③CDN企業をハブとして、AIとコンテンツ企業が共存する経済圏が構築されていく見通し

AIエージェントの巡回6,000に対し、ユーザーの訪問は1人

さまざまな企業で、調査業務などをAIエージェントに任せることが当たり前になりつつあります。しかしその裏側では、AIエージェントがウェブサイトを自動巡回(クロール)して情報を吸い上げ、その結果をユーザーに直接届けてしまうため、元の記事を読みに来る人が減るという現象が起きています。

CDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク )1を手掛ける米IT大手Cloudflare(クラウドフレア)のCEOの発言によれば、以前はグーグルの検索ボットがサイトを2ページ分巡回するごとに1人のユーザー訪問があったのに対し、現在は検索ページ上で答えが完結するケースが増えたことで、6ページごとに1人にまで悪化。オープンAIではAIによる250ページの巡回に対し1人の訪問、Anthropic(アンソロピック)にいたっては6,000ページの巡回に対し1人の訪問という水準になっているそうです。

コンテンツを作る側からすれば、まさに「タダ乗り」ですよね。この問題への対策として、業界はどう動いているのでしょうか? 大きく分けると「ブロックする」「ルールをつくる」「お金を取る」という3つの方向性があります。

対策① ブロックする

まず最もわかりやすいのが、AIエージェントの自動巡回そのものをブロックするアプローチです。最近では、AIエージェントを一括でブロックする機能を提供したり、「許可したい場合だけアクセスを認める」というオプトインの設計を採用したりする動きも広がっています。

さらに、単に遮断するだけでなく、ルールを無視して侵入してくるAIエージェントを「わざと偽情報の迷路に誘い込んでリソースを浪費させる」という対抗策も登場しています。人間のユーザーなら辿らない隠れたリンクや導線を引いておき、あたかも本物らしい偽のページに誘導して、延々と情報を読み込ませるという方法です。「だまして消耗させる」という、なかなか面白い発想ですよね。こうしたサービスを提供する代表格の一つがクラウドフレアです。

対策② ルールをつくる

技術的にブロックするだけでは限界があるため、AIに対し「そもそもどこまで使っていいか」をウェブの仕組みとして宣言できるようにする動きも進んでいます。

たとえば、「検索結果への表示はOK」「AIエージェントの回答生成に使ってOK」「AIの学習に使うのはNG」といった使用許諾条件を、コンピュータが読める形で設定します。ただし、これはあくまで意思表示であって技術的な強制力はなく、AIエージェントが無視する可能性もあります。

この設定を標準化する取り組みが業界横断で進んでおり、ヤフーや米国の掲示板型サイトReddit(レディット)、ブログサービスのMedium(メディウム)などの大手ウェブサイトにより「RSL(Really Simple Licensing)」という規格が2025年9月に発足しました。これは、音楽業界で普及している集団著作権管理モデルを応用した構想です。

こうした取り組みは無断利用からコンテンツを守るだけでなく、AIを使用する側が透明性の高いデータを収集することにもつながります。

対策③ お金を取る

②の対策と連動して、「使うなら対価を払ってね」という収益化の動きも広がっています。AIエージェントによる巡回やコンテンツ利用を前提に、課金の仕組みを組み込もうという発想です。

たとえば、AIエージェントに対し「無料で許可・有料で許可・完全ブロック」を選べる仕組みや、「AIエージェントの巡回1回あたりX円」などの従量課金モデルが登場しています。クラウドフレアの「Pay Per Crawl」はその一例で、課金の仕組みをCDN上に実装してコンテンツ発行者にサービスとして提供するものです。

また、特定のCDNに依存せず、サイト側に“料金所”を設けてAIエージェントの認証と課金を管理するTollBit(トールビット)というプラットフォームも現れています。さらに先を行くアプローチとしては、AIエージェントが自分で身元を証明し(人間でいうところの本人確認)、クレジットカードでリアルタイムに決済を行う「エージェント向け決済基盤」を米Skyfire(スカイファイア)などが開発しています。AIが自律的にコンテンツを購入する世界のインフラを目指しているわけです。

AIエージェントとコンテンツの関係は「共存」へ

当初はただブロックするしか手立てがなかったのが、いまや利用条件の標準化や課金の仕組みが整いつつあり、「AIとコンテンツ企業が共存する経済圏」が形作られようとしています。ただ現状、どのアプローチにも課題はあります。たとえばルールを作ったとしても、AI開発企業側が参加してくれなければ絵に描いた餅です。

とはいえ対策は確実に進んでおり、クラウドフレアを筆頭にCDN各社がそのハブになろうと動いています。コンテンツを作る側も使う側も、この新しいルール作りに関わっていく必要がありそうです。次回もお楽しみに、Catch you later!

  1. 安定したコンテンツ配信を実現するため、ネット上でのアクセスを分散させて閲覧時の遅延を減らすサービス ↩︎


高柳 慎一 写真

高柳 慎一
ボストン コンサルティング グループ
BCG X プリンシパル

北海道大学理学部卒業。同大学大学院理学研究科修了。総合研究大学院大学複合科学研究科統計科学専攻博士課程修了。博士(統計科学)。株式会社リクルートコミュニケーションズ、LINE株式会社、株式会社ユーザベースなどを経て現在に至る。デジタル専門組織BCG Xにおける、生成AIを含むAIと統計科学のエキスパート。


記事一覧へ