【CES 2026レポート】自動運転、フィジカルAI、量子コンピューターに熱視線——ちょっとだけマニアックなAIの話 特別編

世界の皆さん、おはようございます、こんにちは、こんばんは。BCG Xの高柳です。今回は特別編として、米国ラスベガスで開かれている世界最大のエレクトロニクス見本市「CES 2026」見聞録ということで、現地で感じた空気感をなるべく生々しく書いてみようと思います。

この記事のポイント

「自動運転の進化」「AIからAIロボ、量子コンピューターへ」が鮮明に

②自動運転・AIロボ・量子コンピューターともにデモの段階ではなくすでに商売になっている

エヌビディアが大きな存在感を示す

まず結論から言うと、今年のCESは「EVではなく自動運転の進化」「AIではなくAI搭載ロボ(フィジカルAI)と量子コンピューター」という色合いがかなり強かったです。

少し前までのCESは、どのブースに行ってもEV、EV、EV……という印象でしたが、この1~2年は明らかにトーンが変わっています。完成車そのものの展示は減り、その代わりに「どうやってクルマを賢く動かすか」「人が運転しなくていい世界をどう作るか」という文脈が前面に出ている感じです。具体的に言うとSDV(Software Defined Vehicle)を前提として、各社がクルマを賢くするAIや自動運転の各要素(LiDARなどのセンシング部分、物体認識等々)に注力している様子がうかがえます。

特に自動運転まわりは、すでに報じられている通りかなりの盛り上がりでした。センサー、制御、シミュレーション、そしてAI。EVという“箱”よりも、中身の頭脳勝負に完全にシフトしてきたな、という印象です。EVブームが一巡して、次の成長軸が自動運転の進化に定まってきた、そんな空気を会場全体から感じました。

BCG産業財・自動車グループの日本共同リーダーを務める滝澤 琢は、「AIを活用したエンド・ツー・エンドの自動運転を各社が打ち出している」と説明します。すなわち、クルマに搭載したセンサーから入力される情報をAIが分析し、それを基に、進む、止まる、曲がるという車両の制御までを一気通貫でAIが担う方式の自動運転が主流に躍り出ようとしているのです。

これまでは、伝統的な大手自動車メーカーをはじめ新興の自動運転ベンチャーでさえ、あらかじめ定めた規則に従ってクルマを動かすルールベースの自動運転が中心でしたが、市場は急速にAIによるエンド・ツー・エンドの自動運転にシフトしています。

アメリカのシリコンバレーを拠点とするAIスタートアップ企業テンサーのロボカー展示
アメリカのシリコンバレーを拠点とするAIスタートアップ企業、Tensor(テンサー)のロボカー展示

もう一つ強く印象に残ったのが、AI搭載ロボの存在感です。しかも面白いのは、米国企業よりも中国や韓国企業の展示がとにかく多いことです。倉庫、工場、店舗、家庭向けなど用途もかなり具体的で、「研究デモ」より「もう売りに行ってます」という雰囲気。正直、商業化へのスピード感はアジア勢のほうが一枚上手だな、と感じました。

分業化も進んでおり、例えば「ロボ本体(ハードウェア)」「AI(脳)」「パーツ(手)」のみの販売など、多様化が進んでいました。一方、実演されるデモをよく見ると、例えば物を掴もうとしているが失敗したり、YouTubeで公開されている動画に比べて実際の動きがもっさりしていたりと、課題も残っていますが、いち早く市場をおさえるために顧客獲得に動いている姿勢が印象的でした。

ロボットの展示が多数
ロボットの展示が多数
AIロボットの「手だけ」販売している企業も
AIロボットの「手だけ」販売している企業も

量子コンピューター分野も同様で、以前のような夢物語ではなく、「まずはここから使えます」という現実路線の説明が増えていました。講演の内容も実施したPoC(概念実証)の話ではなく、本格運用での商業化の話がいくつも紹介されていて、技術が一段階進んだ証拠だと感じました。それを反映するかのように想像以上の参加者がおり、講演は常に満室、かつ、入るにも長蛇の列という状況でした。

量子コンピューターの開発に取り組むカナダのD-Waveの講演

そして、この2つのジャンルに共通して圧倒的な存在感を示していたのがAI向け半導体を手掛けるエヌビディアです。Foundry(半導体製造)エリアに構えた大規模ブースは、まさに人だかり。自動運転もロボも、その裏側を支える計算の中心にエヌビディアあり、という構図がとても分かりやすく可視化されていました。「結局ここ通るよね」という立ち位置を、CESのど真ん中で見せつけられた感覚です。

ともに参加したBCGのテクノロジー領域に詳しい長谷川 晃一も「エヌビディア一強の状況は変わらず、かつ、彼ら自身がAIのみならずあらゆる産業でプラットフォーム化しつつある」とコメントしています。

エヌビディアの展示
エヌビディアの展示

全体を振り返ると、CES 2026は「派手な未来」よりも「現実に降りてきた未来」を感じる展示が増えた年でした。流行り言葉より、ちゃんと動くもの。そんな方向に確実に進んでいる気がします。次回もお楽しみに、Catch you later!


高柳 慎一 写真

高柳 慎一
ボストン コンサルティング グループ
BCG X プリンシパル

北海道大学理学部卒業。同大学大学院理学研究科修了。総合研究大学院大学複合科学研究科統計科学専攻博士課程修了。博士(統計科学)。株式会社リクルートコミュニケーションズ、LINE株式会社、株式会社ユーザベースなどを経て現在に至る。デジタル専門組織BCG Xにおける、生成AIを含むAIと統計科学のエキスパート。


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