第12回 SEOからAIOへ 「発見される」ための対策は広告戦略でも必須に
世界の皆さん、おはようございます、こんにちは、こんばんは。BCG Xの高柳です。皆さんはオンラインで買い物をするとき、まず何から始めますか? 以前なら、たとえば検索エンジンに欲しい品物やブランド名を入力し、検索結果の中から目ぼしいサイトを選んで、いくつかの候補を比較検討して購入する……といった流れが一般的だったでしょう。しかし最近では、「まず生成AIに聞く」という人も多いのではないでしょうか。
人々が検索感覚でAIを使うようになってきたことで、企業は自社の商品・サービスを“AIに”見つけてもらう必要が出てきました。今回は「AI時代の発見されやすさ (Discoverability、ディスカバラビリティ)」というテーマで、検索の世界で起きている大きな変化についてお話しします。
①消費者の情報探索の入り口は「検索」から「AIとの対話」へシフト
②AIに引用・おすすめされるための構造化(AIO、GEO、GXO)が必須に
③AI内広告の普及に備え、商品やプロモーションの情報も最適化する必要がある
「検索」よりも「AIとの対話」で情報を探す時代
企業が自社のサービスを消費者にオンライン上で見つけてもらうには、これまで以下3つの方法が主流でした。
- SEO(検索エンジン最適化)
- リスティング広告(検索連動型広告)・ディスプレイ広告・リテールメディアなどの有料マーケティング
- Instagram、TikTokなどのSNSマーケティング
これは、消費者がキーワードを検索欄に入力してリンクをたどる時代には十分有効でした。しかし、消費者がChatGPTやClaude、Geminiなどの生成AIに相談することが一般的になれば、「何かを探す」という行為そのものが大きく変わっていきます。
AIには、たとえば「予算5万円で旅行に行きたい。おすすめは?」「肌が弱い私に合う日焼け止めってどれ?」「最近流行っているワイヤレスイヤホンを比較してどれがいいか決めて」といった曖昧な相談も可能です。ユーザーはもはや、どんなキーワードで検索するかを考える必要がなく、AIに要望や状況を伝えるだけで、対話を通して候補の絞り込みから比較、意思決定までサポートしてもらえるのです。
AIOやAI内広告……「発見しやすい」構造に整える
企業はこうした変化に備え、ブランドやマーケティングの観点から、「商品・サービスをどうやって消費者に見つけてもらうか」を根本から見直さなければなりません。
現時点では2つの対策が考えられます。
①AIに選ばれるコンテンツを作る
AIが探索を担う世界では、コンテンツが「対話の中でAIに引用される」ことが重要になります。AIは消費者から質問を受けると、各サイトを見比べて回答の参考にすべき情報を選びます。参照先として選ばれるためには、ウェブサイト内に問いと答えを対にして、AIが理解しやすい形で整理しておく必要があります。
(例)
「クレジットカードのポイント還元とは?」(定義)
「電気代を節約する方法は?」(ハウツー)
「初心者向けの一眼レフはどれがおすすめ?」(比較・推奨)
「返品は何日以内にできる?」(FAQ)
この手法は最近では「AIO(AI検索最適化)」「GEO(生成エンジン最適化)」「GXO(ジェネレーティブ・エクスペリエンス・オプティマイゼーション)」などと呼ばれており、要は、AIに「このサイトは信頼できて、ユーザーの疑問にちゃんと答えている」と認識してもらうための工夫です。
ちなみに、AIも調べる過程で検索エンジンを使用する場合があるため、従来のSEOが全く無用になるとも言い切れません。当面は両方を押さえておくべきでしょう。

②AIの中に広告を出す
米国では、グーグル検索と対話型AIを組み合わせた「AIモード」に広告が挿入される実証実験が進んでいます。たとえばユーザーが「週末に行ける家族向けのビーチリゾートを探している」と質問すると、広告枠を購入した航空会社やホテルブランドが提供するプランの中から、AIが最適と認識したものが「おすすめ」として回答に組み込まれます。今後は従来のインターネット広告に代わって、こうしたAIによる提案自体が広告になるでしょう。
企業側はこの変化を見越し、AIが回答を生成する際に参照しやすくなるよう、製品データやプロモーション情報を適切に構造化しておく必要があります。①と同様、AIがおすすめしたくなる形に情報を整えておくことが、今後普及するとみられる新たな広告枠を活用する前提条件となります。
自社コンテンツがAIにどう見えているのかをチェックする
米スタートアップ支援会社のYコンビネーターは、検索エンジンの利用量は2026年までに25%、2028年までに50%減少し、生成AIに置き換えられると予測しています。企業はいま対策をとらなければ、競合に大きく遅れを取るおそれがあります。
まずは、自社のコンテンツがAIからどう見られ、どれくらい引用されやすい状態になっているのかを把握することが出発点になります。そのうえで自社の提供価値やサービスのあり方を再定義し、プロダクトやコンテンツをAI向けに最適化していくことが重要です。この一連の流れを段階的に進めることで、「AI時代の発見されやすさ」を獲得できるのではないでしょうか。
次回もお楽しみに、Catch you later!

高柳 慎一
ボストン コンサルティング グループ
BCG X プリンシパル
北海道大学理学部卒業。同大学大学院理学研究科修了。総合研究大学院大学複合科学研究科統計科学専攻博士課程修了。博士(統計科学)。株式会社リクルートコミュニケーションズ、LINE株式会社、株式会社ユーザベースなどを経て現在に至る。デジタル専門組織BCG Xにおける、生成AIを含むAIと統計科学のエキスパート。