「同じコンビニ弁当でも郊外より都心の店の方が価格が高い」を7割超が許容――BCG消費者心理調査

日本でもインフレは一時的な現象ではなくなったと、すでに多くの消費者が実感しているところだろう。総務省の発表によると、2024年の生鮮食品を除く全国消費者物価指数は前年比2.5%、3年連続で上昇している。BCGが2025年3月に公開した「BCG消費者心理調査――価格設定の高度化を見据えて」では、日本全国の消費者を対象にした調査結果をもとに、物価上昇の実感や商品・サービスの価格設定に対する意識の変化を読み解いている。
①食品・飲料、旅行・移動のカテゴリーで消費者の8割以上が値上げを実感
②消費者の過半数は「一物多価」を許容しているものの、価格を変える理由の伝え方が重要に
③生成AIの使用経験がある消費者の7割以上がAIに期待。企業からのコミュニケーション・価格設定などでの活用を望む
8割超の消費者が物価上昇を実感
調査は2024年8月、日本全国の18歳以上の消費者8,000人以上を対象に実施した。食品・飲料、アパレル・ファッション、旅行・移動、エンターテインメントのカテゴリーについて、8割超の消費者が「直近で価格が上がったと感じる」と回答している(図表1)。この割合は前回調査(2023年実施)でも7割超に及んでおり、引き続き多くの消費者が値上げを実感していることがうかがえる。

物価上昇を受けてより低価格の商品に購入を切り替えるなど「消費行動を変えた」と答えた消費者の割合は、前回調査では大きく増加していたが、今回調査では前回と同程度の5割前後だった。
同一商品でも価格が異なる「一物多価」を過半数が許容
価格設定に対する受け止め方についても調査したところ、同一商品であっても価格が異なる「一物多価」を過半数の消費者が受け入れられると感じていることが明らかになった(図表2)。イートイン・テイクアウトといった利用形態による価格の違いを84%の人が受け入れており、「同じコンビニ弁当でも郊外より都心の店の方が高い」といった人件費による価格の違いでも75%が許容できると回答した。

価格を変動させる場合は、理由の伝え方が重要に
ただし、価格差異の要因が同じであっても、商品・サービスの特性や、価格を変える理由の伝え方によっては、許容度が大きく異なることもわかった(図表3)。例えば、「コンビニの弁当が離島にある店では高い」「ATM手数料が地方都市では割増」といった状況は、いずれも輸送費が主な要因の価格差異だが、受け入れられる人の割合が前者では75%であるのに対し、後者では24%と大幅に差があった。また、「収入や資産により価格を変える」といった説明よりも、「学割」「シニア割」など、妥当な理由と感じられる伝え方の方が許容できる人の割合が30ポイント近く高かった。

生成AI使用経験がある消費者の7、8割が企業のAI活用に期待
今回の調査では、消費者が企業のサービスにおけるAI活用についてどのように考えているかについても尋ねた。生成AIの使用経験がある人、日常的に使用している人ほど、「AIによってより暮らしやすくなる」と考えており、「問い合わせへの回答」(83%)、「クーポンを個人ごとに最適化」(77%)、「リアルタイムの価格設定」(72%)など、企業による消費者向けサービスでAIが活用されることに期待する傾向があった(図表4)。期待の割合は、未経験者層では5割程度にとどまっている。

調査を担当したBCGのマネージング・ディレクター&パートナー、紀平 啓子は「日本でもインフレが一過性の出来事ではなくなり、消費者の意識は大きく変わってきている。原価上昇やコストの違いによって値段を使い分けることが『フェアな値付け』だと考える傾向は、今後も強まると見ている。AIなどの新たなテクノロジーが活用されることへの期待も高まっている。企業はこのような環境下で、どのように価格を設定し、消費者に説明していくのか、より慎重かつ精緻に考えることが求められている」と話す。
■調査資料: 「BCG消費者心理調査――価格設定の高度化を見据えて」(2025年3月)
本調査は2020年に「BCG COVID-19消費者心理調査」シリーズとして開始した。2023年に新型コロナウイルスが5類に移行したことを受け、第10回以降は「BCG消費者心理調査」シリーズとして、分析の視点やトピックを変えながら継続して実施している。過去の調査結果はこちら。