【国際女性デー】女性のニーズと製品・サービスの不一致、特に医療と金融で顕著 BCG調査

3月8日は国際女性デーだ。女性は、消費者としても強い影響力を持っている。しかし、現在の市場にある製品・サービスでは女性のニーズが十分満たされていないことがBCGの最新調査から明らかになった。
調査は12カ国・約15,000人を対象としており、回答者のうち4分の3が女性だ。調査結果からは、多くの事業領域で女性消費者のニーズが正しく反映されておらず、機会損失につながっている実態が浮き彫りになっている。
特に女性のニーズを満たせていないのは医療分野
調査会社ニールセンによると、女性は世界の消費支出の約32兆ドルを管理している。しかし、BCG Xの調査から、消費財、医療、金融などの主要分野において、女性は製品やサービスが自分たちのニーズを満たしていないと考えていることがわかった(図表1)。
特に女性のニーズを満たせていない事業領域は医療だ。女性は家庭内のヘルスケアに関して意思決定の大半を担っているが(日本は75%)、本調査で女性特有の健康問題に十分対応したサービスがあると回答した女性は41%にとどまった。各領域の製品・サービスに対する満足度を示すデータにおいても医療機関や医療保険の数値は低く、それぞれ44%と37%となっている。日本でも同様の傾向があり、医療機関に対する満足度は31%、医療保険に対する満足度は21%となった。
こうした課題を改善するためには、女性が医療サービスにおいて何を重視しているのかを理解することが必要だ。本調査で女性が重視すると回答した要素は「質の高い医療(87%)」、「予約対応の迅速さ(82%)」、「手頃な価格(82%)」、「サービスを受けやすい便利な場所(76%)」、「偏見のない公平で公正なケア(76%)」だった。
金融領域の課題はライフステージへの対応
女性は年間5兆ドルもの資産を生み出している一方、自身の不安を解消できる金融分野のサービスが少ないと感じている。特に日本においては、金融領域に対する女性の満足度は医療分野と並ぶ低さだ。例えば、退職後の備えに対する満足度は21%、税務申告準備の満足度は22%で、世界平均がそれぞれ47%、45%であるのに比べて半分以下となっている。
また図表2にある通り、女性は男性よりも主なライフイベントが財務に及ぼす影響への不安が大きい(借金は+9ポイント、退職後の生活は+8ポイント)。懸念事項はライフステージによって異なることもわかっている。Z世代(16~24歳)やミレニアル世代(25~40歳)の女性は失業への懸念が強い一方、X世代(41~56歳)の女性は退職後の生活を、ベビーブーマー世代(57~78歳)の女性は介護費用を最大の心配事としている。ほとんどのステージにおいて、女性は男性よりも財務的な問題に対する不安を強く感じている。
さらに、調査によると、財務スキルに対する自信がない女性の割合は、男性より高い傾向があった。特にベビーブーマー世代では、効果的な財務管理のスキルや知識を持っていると答えた女性の割合は、男性より8ポイント低くなっている。X世代では5ポイント、ミレニアル世代とZ世代では4ポイントの差が見られた。
女性向け市場での成功を掴むにはトライアンドエラーが必須
女性向け製品やサービスを成功に導くためには重要な要素がいくつかある。そのうちのひとつが「製品・サービスの魅力」だ。企業は、今は満たされていない女性の機能的・感情的ニーズに応えているかどうかを、定性、定量両方のアプローチで確認する必要がある。

また、女性の登用も重要な要素と考えられる。組織のあらゆるレベル、特にリーダー層に、各分野での女性の実体験を深く理解し、満たされていないニーズやその解決策を本質的に見抜ける人材が不可欠だ。
BCG東京オフィスで消費者心理にくわしいマネージング・ディレクター & パートナー、紀平 啓子は次のようにコメントしている。「特に日本では女性が購入の意思決定を担うことが多いこともふまえると、企業は潜在的な女性向け市場を考慮して経済合理性を考える必要がある。女性のニーズは既存の製品・サービスでは満たされておらず、今後、試験的な市場投入などのトライアンドエラーを通じて、潜在的なニーズを捉える手法も考えていくことが重要だ」
調査レポート:The $32 Trillion Opportunity in Women-Focused Products and Services(2024年12月)