美容医療の利用率は日本が最低 6つの消費者タイプで考える市場アプローチ

BCGが日本、韓国、米国、フランスなど10の主要な市場で5,000人の消費者を対象に行った最新調査によると、現在の美容医療の市場規模は約200億ドルと推計されている。市場全体では2019年から年平均8%の成長を続けており、2028年までに270億ドルに達する見込みだ。美容医療市場は今後も順調な成長が続くと予想される。しかし、施術別でみると、日本人の美容医療の利用率はすべての施術で最下位だった。

美容医療施術の利用率は他国と比較し日本が最下位

調査は、25歳から64歳で各国の所得の中央値50%以上の収入を得ており美容およびメディカルエステ製品に親しんでいる人々を対象に、さまざまな治療タイプの普及度を分析した。
主な調査結果は以下の通りだ(図表1)。

美容医療施術を受けたことがあると回答した人の割合を表した図表(国別データ)

神経調節剤を用いた注射治療(ボトックス等)や糸リフトなど9つの施術で、日本における利用率はすべて最下位となった。日本で利用率が最も高かったのはレーザー脱毛で3.4%だが、1位の中国は23%、次いでスペインが12%、米国は11%の利用率で大きな差がある。

若返り・肌の引き締めを目的としたエネルギーベースの美容機器1を用いた治療は、日本の利用率が1.7%なのに対して中国は17%、韓国・米国は同率で6%。ボトックスなどの神経調節剤を用いた注射治療は、日本が1.2%に対し、韓国8%、米国7%、中国・ドイツは同率で6%だった。ヒアルロン酸など皮膚充填剤を用いた注入治療は日本が0.4%に対し、米国・中国は同率で7%、次いで韓国が6%と日本の利用率の約16倍となった。

美容医療の市場規模は2028年までに約270億ドルに達する見込み

美容医療の市場規模は現在約200億ドルで、今後も年平均6%の成長が予想され、2028年には270億ドルになる見込み(図表2)。市場成長率を施術別で見ると、医療機関を通じたスキンケア市場は9%と高い成長が見込まれ、ボトックスなどの神経調節剤を用いた注射治療は7%、ヒアルロン酸注入など皮膚充填剤を用いた注入治療は6%の成長が期待される。

美容医療の市場規模を表した図

6つの消費者タイプ、日本は「美容医療を一時的に試す人」が多い

BCGは美容医療における消費者を、治療の頻度・好まれる治療の組み合わせ・行動パターン・医療提供者へのロイヤルティ(信頼度)に基づいて6つの異なる消費者タイプにグループ分けした。6つの消費者タイプは以下で、そのうち日本は「美容医療を一時的に試す人」が多い。

  1. 美容医療の習慣を持つ人: これらの消費者は年齢が高く(ベビーブーマー世代やX世代2)郊外に住んでおり、専門家からの推奨を通じて継続的なアンチエイジング治療を受けている。このグループで最も一般的な施術はボトックス治療とヒアルロン酸注入治療などであり、安全性を重視している。(ブラジル・ドイツ・イタリア・スペインに多い)

  2.  若さを保ちたい人: これらの消費者はやや若く(X世代やミレニアル世代)都市部に住んでおり、老化を防ぎたいと考えている。芸能人やSNSの情報をもとに、ボトックス治療、レーザー治療、およびヒアルロン酸注入治療などを好む。(同)

  3.  お洒落好きで社交的な人: これらの消費者は高収入で都市在住のミレニアル世代が含まれている。美容トレンドを追いかけ、社交的なイベントの前によく施術を受ける。SNSのトレンドに影響され、安全な治療を優先し、主にエネルギーベース美容機器を用いた治療(レーザー脱毛、皮膚の再生治療、瘦身治療)やボトックス、ヒアルロン酸などの注入治療を好む。(同)

  4.  お得情報を探索する人: これらの消費者にはすべての世代が含まれ、価格で施術を選ぶ。予算に優しい治療、プロモーション、および割引を求め利便性を重視する。

  5. 美容医療を一時的に試す人: これらの消費者は効果に対して懐疑的、もしくは知識不足のために、単一の施術にとどまる。レーザー脱毛(男性の割合が高い)とボトックス治療を好む傾向がある。新しい施術を試すのを妨げる主な要因は、治療の必要性を確信できないことと施術で変化した外見が不自然に見えることへの懸念だ。(日本・フランスに多い)

  6.  これから美容医療を始める人: これらの消費者は将来美容医療を試したいという思いがある。このグループの世代はさまざまであるが、特に若者や学生が多い。最も一般的な施術はレーザー脱毛で、ボトックス治療は年齢が上の世代で人気だ。施術に対する懸念点は価格、知識不足、および安全性に関する不安だ。(米国・イギリス・韓国・中国に多い)
男性の美容医療はヒゲ脱毛が多い

企業は消費者と信頼を深め長期的な関係を構築することが重要である。スタッフは顧客サービスに重点を置き、クリニックは最新の治療を確実に提供できるようにサービスを多様化すべきだ。そうすることで医療提供者は単一の施術だけでなく、ヒアルロン酸注入治療やボトックス治療など複数の施術を組み合わせることで顧客単価を向上させる機会を創出できる。特に価格に敏感な消費者には、セット価格や割引を提示することも大切だ。

日本に多い消費者タイプの「美容医療を一時的に試す人」に何度も施術を試してもらうためには、医療提供者は美容治療の必要性をアピールし、効果への不安に配慮する必要がある。また、瘦身治療、肌の引き締め、レーザー脱毛など、魅力的な施術の組み合わせに触れる機会を増やすべきだ。治療を受ける頻度の少ない顧客と強力な関係を築くためにはマーケティング活動に加え、ポイント制度や会員特典など継続的な利用を促す仕組みを提供することが欠かせない。

美容医療市場は消費者の支出増加や技術革新により、今後5年間で持続的な成長が見込まれている。市場を拡大するためには潜在的な消費者のニーズ、好み、願望を理解することが重要だ。今回の調査レポートで特定した6つの消費者タイプは美容医療市場へアプローチする際の参考になるだろう。

■ 調査レポート
The Six Types of Medical Aesthetics Consumers, and How to Serve Them All

  1. エネルギーベースの美容機器(EBD -Energy-Based Devices): レーザー、ライト、電磁エネルギー、超音波などの技術を使用して、脱毛、皮膚の引き締め、顔の若返り、脂肪減少、セルライト除去、傷の除去などの美容目的で利用される機器を指す。 ↩︎
  2. 米国で第二次世界大戦後から1960年代半ばに生まれた世代をベビーブーマー世代、1960年代半ばから1980年頃に生まれた世代をX世代と呼ぶ。 ↩︎