調達をめぐる「トリレンマ」とは ――『BCG流 調達戦略 経営アジェンダとしての改革手法』より

ESGへの対応の一環として、取引先の選定時に、品質(Q)、コスト(C)、納期(D)などこれまで重要視されていた条件に加えて、ESG観点を組み込むことが必要になる。多くの場合、QCDの要素とESG観点の間にはトレードオフが生じる。

図表3は、ESGを取引先選定基準に取り込んでいる企業における選定プロセスの例だ。第一段階で、サステナブル経営についての初期的なスクリーニングを行い、自社の最低要求基準を満たさない候補先を候補から外す。次に、QCD観点から加点減点方式で評価し、そこにサステナビリティ観点を加点する。図表のAとBのように、QCDで優位のA社は捨てがたいが、サステナブル観点ではB社が優位、というパターンでも、基準を明確にしていれば、B社を選ぶという意思決定が可能となる。

サステナビリティ要件を取り込んだ取引先(サプライヤー)選定プロセスの先進事例を解説している。

トリレンマは調達部門だけでは解けない

図表3のA社とB社のどちらを選択するかを検討するとき、B社を選ぶ意思決定を下すことは、伝統的にコストを重視してきた従来の調達部門単独では難しい。ハイレベルな視点で意思決定し、全社最適を目指して基準を設定することが求められる。しかし、そのことに気付いている経営者はまだ少ない。

書籍『BCG流 調達戦略 経営アジェンダとしての改革手法』(日本経済新聞出版)では、調達部門が陥っている苦境を分析し、トリレンマを乗り越え、調達機能を競争力の源泉とするためにどう改革を進めるべきか、道筋を示している。