思考ツールで業界のルール作りを考える―『BCG 経営課題解決「20の思考ツール」』第1回
戦略立案に不可欠な「構造化」とは
20の思考ツールのうちの一つ「構造化」とは、物事の全体像・構成要素・要素間の関係を可視化し、複雑な問題を論理的に扱える形に変換する思考法である。単なる整理ではなく、課題解決や意思決定を加速させることを目的としており、コンサルタントに欠かせない基本技だ。
構造化では、まず課題の要素を分解し分析する「要素分解」を行う。ポイントは、分解の方法が一つとは限らないこと、階層的に展開していくことだ。
例えば、「利益が減少している」という経営課題を要素分解する場合、分解方法は以下のように複数考えられ、それぞれ異なるアプローチにつながる。
- 利益=売上-コスト
売り上げが減少しているか、コストが増えているかを検討する
- 利益=事業別利益の合計-本部コスト
利益が減少している事業部はどこか、本部のコストは増加していないかを検討する
さらに上記の「利益=売上-コスト」という要素分解であれば、「売り上げ=顧客数×顧客単価」「コスト=原価+販管費+その他」と下の階層で分解する。さらに一階層下で「顧客数=新規顧客獲得数-解約した既存顧客数」と分解することで、課題解決の具体的な施策検討につなげられるのだ。
実際に要素分解を行う際は、短時間で質の高い再現性のある議論を行えるよう、まず図表1のような既存のフレームワークの活用を検討するのがよい。こうしたものが使えない場合は、①所属組織や業界で一般的な方法、②経営指標を数式で表す方法、③過去に自ら熟考した方法のいずれかを用いる。

SNS時代に重要性を増す「マルチ・ステークホルダー・マネジメント」とは
マルチ・ステークホルダー・マネジメントとは、企業が株主だけでなく、顧客・従業員・取引先・政府・地域社会など多様な利害関係者と良好な関係を築きながら、バランスを取って意思決定を行う経営手法である。各ステークホルダーはそれぞれ異なる期待や価値観を持っており、企業はそれらを踏まえた経営が求められる。
近年この考え方は重要視されており、その背景には、ESG投資の拡大やCSR・サステナビリティへの関心の高まりがある。企業評価の軸は「株主価値の最大化」から「持続可能な価値創造」へと広がり、社会課題への対応や長期的視点が重視されるようになった。また、SNSの普及により企業行動が可視化され、社会的要請への迅速かつ適切な対応が不可欠となっている。
効果的に進めるためのステップは以下の通りである。
- ステークホルダーの特定と分類
関係者を洗い出し、影響力や関心度に応じて整理する - 期待の理解
各ステークホルダーのニーズや相反する要求を把握する - 利害調整と優先順位設定
全員を満足させることは難しいため、優先順位を明確にする - 対話と関係構築
継続的なコミュニケーションで信頼を築く - 透明性と説明責任の確保
意思決定の背景を開示し、理解を得る - 戦略・オペレーションへの統合
ステークホルダーの視点を経営戦略や業務に反映させる
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