思考ツールで業界のルール作りを考える―『BCG 経営課題解決「20の思考ツール」』第1回
めまぐるしく変化する世界情勢や技術の進化によって、今日のビジネス上の課題は複雑化している。BCGでコンサルタント歴30年を迎える井上 潤吾の著作『BCG 経営課題解決「20の思考ツール」 成果を最大化する「7つの要素」』は、難しい経営課題を解決に導くための考え方を示す一冊だ。本書の解説とあわせて内容を一部抜粋、要約して紹介する。
複雑な経営課題解決を支援する
様々な場面で遭遇する経営課題は、自己流で解決しようとすると、正しい答えに行き着かないことがある。たとえ正しい方向に踏み出しても、考慮不足や思い込みで施策を実行してしまうと、期待通りの結果が出ない。自己流から脱して、先人たちが経験してきた知恵を生かせば、効率的に成功確率が高い解決法が見つかる。その知恵を体系化したものが思考ツールである。
思考ツールは世の中に数多く存在するが、本書ではその中から20を厳選し、下記のように3つに分類した。これだけ頭の引き出しに入れておけば、ほぼすべての経営課題に対応可能だというのが本書の考え方だ。
① 現状分析を支援する戦略的思考ツール
- 構造化: 物事の全体像とその中にある構成要素と、その要素同士の関係をわかりやすく可視化する
- 類型化: 物事や事象を共通の特徴に基づいて分類し、一定の型に当てはめる
- 脱平均化: 個別の要素ごとの違いを考慮して分析を行い、単純な平均値に基づいた意思決定を避ける
- 悪循環と好循環: ある出来事や状況が連鎖的に影響を与え、結果として次々に悪化、または改善していくサイクルごとの違いを考慮する
- コンテクスト重視: ある情報や行動の意味や価値を、背景、状況、関係性の中で理解する
- バリューチェーン分解: 企業のバリューチェーン(価値連鎖)を細かく分析し、各プロセスでコスト構造や付加価値を明確にする
② 戦略構想と施策立案に用いる思考ツール
- 多角的な視点: 一つの物事を様々な立場や角度から考え、より深い理解や柔軟な発想を試みる
- アナロジー: ある対象と別の対象の間にある共通点を見つけ、それを基に考える
- インパクト重視: 人を動かし、本質的な価値を社会に生み出すことを目的に考える
- 差別化/独自性: 競合他社と明確に異なる特徴を打ち出し市場の中で際立つことを考える
- 他社事例とベンチマーク: 他社との比較のなかで自社の立ち位置を明確化し施策を練る
- バックキャスティング: 望ましいゴールを設定し、現在何をすべきかを逆算する
- 仮説と検証: 仮定上の説をつくり、データや実験、調査を基に確かめる
- オープン・クローズド戦略: 市場において「オープン(開放)」と「クローズド(囲い込み)」をバランスよく使い分けて競争優位を築く
③ 成果の創出と維持を促す思考ツール
- 学習する組織: チームや組織全体が共に学び、変化に適応して成長し続けることを目指す
- Before/After: 変化の前後を対比することで価値や効果を強調する
- ストーリー構築: 物語をつくり、共感と記憶で人々の行動を促す
- シナリオ考察: 複数の状況(シナリオ)を想定し、それぞれの影響や対策を検討する
- シミュレーション: 現実世界の現象やシステムをモデル化し、コンピュータなどを用いて仮想的に再現・実験する
- マルチ・ステークホルダー・マネジメント: 企業や組織が関係する複数のステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を築きながら、バランスを取りつつ意思決定を行う
本書では、これらの思考ツールをどう使うか、15のケーススタディで解説している。さらに、より重点施策を洗い出すための「7つの要素」で、解決の精度を上げる方法を説く。
次項からは、上で紹介した思考ツールのうち「構造化」「マルチ・ステークホルダー・マネジメント」の概要を要約。さらにそれらをどう使うか、グローバルビジネスでのルール策定を例に見ていく。