AIエージェントの導入スピードは生成AIを上回る可能性 BCG、MIT共同調査

近年、ビジネスシーンで新たな技術的潮流として注目を集めているのが、目的を持って自律的に行動する「AIエージェント」である。BCGとMITスローン・マネジメント・レビュー誌(MIT SMR)の最新共同調査では、調査対象とした企業の3社に1社がAIエージェントをすでに導入していることが明らかになった。導入の勢いは生成AIを上回る可能性があり、企業の人材構造や業務体制にも変化が広がりつつある。

35%の企業がすでにAIエージェントを導入、44%が近く導入を計画中

調査は2025年春に実施し、AIのビジネスへの影響に関して、世界116カ国21業界の企業・組織に属する2,102人から回答を得た。その結果、登場からわずか2年のAIエージェントについて、すでに35%の企業が導入を進めており、44%の企業が近く導入を計画していることが明らかになった(図表1)。従来型AIの導入率は過去8年間で72%、生成AIは3年間で70%となっており、このまま進めば、AIエージェントの導入スピードは従来型AI、生成AIを超える見込みだ。

企業の35%がAIエージェントを導入しており、44%近くが近く導入を計画していると回答した

調査結果をまとめたレポートは、この導入速度の背景にはAIツールの提供企業が自社製品にエージェント機能を組み込む形で展開していることがあると指摘している。他方で、導入が速すぎることによって業務プロセスの再設計や人材・ガバナンスの見直しといった戦略の検討が追いつかないままAIエージェントの利用が始まり、AI投資の効果が十分に得られないリスクもあるとも述べている。

76%が「AIエージェントは道具より同僚に近い」と回答

AIエージェントは従来のテクノロジーとは異なり、単なる道具や指示待ちのアシスタントではない。複数の工程を自ら実行し、状況に合わせて学習・適応できる「自律的なチームメイト」として振る舞う存在だ。調査では、回答者の76%が仕事においてAIエージェントを「道具よりも同僚に近い存在」と認識していることがわかった(図表2)。

76%が仕事においてAIエージェントを「道具よりも同僚に近い存在」だと回答した

人間に近い動きができるAIエージェントの導入によって、企業で人材に求められる能力も変わる。AIエージェントが複数の部門にまたがって動くようになると、組織を横断しながらAIと人間双方のマネジメントができるジェネラリストへの需要が高まる。一方、AIエージェントが定型的な業務を担うため、新入社員レベルの人材や、従来のように限定された範囲での判断を行う中間管理職・スペシャリストに対する需要は減少が予測される。

実際に調査では、AIエージェント導入の先進企業(自社がAIエージェントを広範に導入していると自ら申告した企業)の43%が「スペシャリスト採用よりジェネラリスト採用を重視するようになる」と回答した。同時に、先進企業の45%は「中間管理職層の削減」、29%は「新入社員向けの職種の減少」を見込んでいる。

また、調査では、以下のような結果も得られた。

  • 73%の先進企業が「AIエージェントの活用によって組織としての競争優位性が高まる」と回答(AIエージェントの導入予定がない企業では53%)
  • 先進企業に属する回答者の76%が「AIエージェントを使うことで、同僚との差別化にもつながる」と回答(AIエージェントの導入予定がない企業では49%)
  • 先進企業の66%が「今後自社の業務体制に変化が生じる」と予測している(AIエージェントの導入予定がない企業では42%)
  • 先進企業の58%が「今後3年以内に自社のガバナンス構造に変化が生じる」と予測している

先進企業で働く人の多くがAIエージェントの有用性を実感しており、自社の業務体制や意思決定に大きな変化を見込んでいる。レポートの共著者で、BCGのAIビジネスを率いるロサンゼルス・オフィスのマネージング・ディレクター&シニア・パートナーシェルヴィン・コダバンテは次のようにコメントしている。「AIエージェントには、既存のビジネスのプロセスを根本から変える力がある。成功する組織は、単に既存のプロセスにAIを当てはめるのではなく、プロセスそのものを再構築する努力を惜しまない企業だ」

■ 調査レポート
The Emerging Agentic Enterprise: How Leaders Must Navigate a New Age of AI

■ 調査概要
AIとビジネス戦略に関するグローバル共同調査

  • 調査方法: 世界116カ国21業界の企業・組織に属する2,102名へのアンケート調査、および企業でAIに関わる取り組みを主導する経営幹部11名へのインタビュー
  • 実施時期: 2025年春

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