約3割の消費者が環境に良い商品に10%の上乗せ料金を支払う意思があると回答 BCG調査

ボストン コンサルティング グループ(BCG)が実施した調査によると、環境に配慮した製品に対し、日本の消費者の26~34%が10%以上の上乗せ料金を支払う意思を示していることがわかった。2025年の「サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査」の結果をもとに、製品のグリーン化と企業利益の両立方法を探る。

環境に良い製品の製造コストの回収には消費者のセグメント精緻化がカギ

25年1月の第10回調査では、環境配慮型のジーンズと洗濯用洗剤を例に、消費者がどれだけの上乗せ料金(プレミアム)を支払う意思があるかを尋ねた。

その結果、一般的なジーンズ(5,000円)に対し、50%リサイクルコットンを使用し、CO2排出を削減した製品に「5,500円以上支払える」と答えた人は26%となった。さらに100%リサイクルコットンを使用し、CO2排出量実質ゼロの製品では、この割合は30%に上昇した。

環境に良いジーンズに対して、約3割が10%以上のプレミアム(上乗せ料金) を支払う意思を示した

同様に、洗濯用洗剤(通常品は400円)については、環境に配慮した成分を一部使っており容器がリサイクルプラスチック製の場合に「440円以上支払える」と答えた人は31%となった。成分・容器ともに環境負荷をほとんど排除した製品では、この割合は34%に達している(図表2)。

環境に良い洗濯用洗剤に対して、約3割が10%以上のプレミアム(上乗せ料金) を支払う意思を示した

ただし、本調査はアンケートであるため、各割合の消費者が実際に上乗せ料金を支払うとは限らないことには留意が必要だ。

2021年のBCGのグローバル調査では、自動車、ファッション、食品、住宅、家電の5つの製品カテゴリーにおいて、サプライチェーンの脱炭素化による最終製品コストへの影響は1~4%程度という試算が示されている。消費者が実際にプレミアムを支払えば、GX(グリーントランスフォーメーション)投資の回収ができる可能性があるともいえる。そのためには、上乗せ料金を支払う消費者のセグメントを精緻に特定して訴求することが重要だ。

「地球温暖化/気候変動問題を知り行動を変えた」と答えた割合は2024年以降横ばい

「地球温暖化/気候変動問題を知って行動を変えた」と答えた割合は、2025年7月の第11回調査では18%となった。この割合は2021年4月から2023年7月にかけて緩やかに増加したものの、2024年1月以降の調査ではほぼ横ばいで推移している(図表3)。

「地球温暖化/気候変動問題」を知って行動変容に至った割合は2023年以降横ばい

また、環境負荷の少ない商品を選択したいと答えた回答者は64%で、実際に行動に移しているのはそのうち30%だった。

実際に環境負荷の少ない商品を選択している理由の1位は「最近の暑さ/寒さなど、気象の変化を感じるから」、2位は「子供世代や孫世代の将来が心配だから」だった(図表4)。この順位は2024年以降の調査で変わっておらず、子や孫世代を案じる層は、環境に配慮した製品の購買層として注目すべき層の1つと考えられる。

実際に環境に良い製品を購入している理由の1位は気象変化の実感で、2位は子や孫世代を案じる気持ち。

調査を担当したBCG東京オフィスのプリンシパル、伊原彩乃は「脱炭素に価値を感じ、選ぶ意思のある層はさまざまな製品について存在していることが改めて明らかになった。その層を見極め、需要を的確に掴み、応えることが必要だ。これは最終製品メーカーだけの話ではない。素材・中間財メーカーから『顧客が自社のグリーン製品を採用してくれない』と嘆く声をよく聞くが、自社製品を使った最終製品の需要を自ら分析し、顧客企業に提案する姿勢も必要と考えている」と述べている。

■ 調査資料
サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果
環境問題をはじめとしたサステナブルな社会の実現に関する消費者意識の変化を定点的、かつ長期的に観測する調査。態度変容の兆しやフックとなる情報・事象の把握、購買行動変化の兆しをつかむことを目的とし、2021年2月から調査を実施。

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