インターネットがメディア視聴時間の6割に、テレビニュースへの信頼度は低下 BCG調査

メディア企業への不信感から業界のあり方が問われる中、消費者のコンテンツへの向き合い方も変化している。ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、日本全国の15歳から69歳までのメディア利用者3,645人以上を対象に実施した「2024年度コンテンツ消費者行動調査」の調査結果を公表した。2022年度、2023年度に続き3回目。テレビやインターネットを介したコンテンツ配信サービス、SNSなどへの個人の接触時間、利用サービス等の変化を把握することを目的としている。

動画配信サービスやSNSがテレビ視聴時間を浸食

メディア総視聴時間(テレビ、SVOD=定額制動画配信サービス、AVOD=広告型動画配信サービス、SNSの合計)はここ3年間、1日約4時間半で安定的に推移している。ただし、最新の調査の内訳をみると、新メディア(SVOD、AVOD、SNS)が全体の6割を占め、以前に比べ伝統的メディアであるテレビの視聴時間を侵食していることがわかる(図表1)。この傾向は若年層だけでなくすべての年齢層で同様だ。

メディア視聴時間の推移とその内訳を示したグラフ。メディア総視聴時間は1日約4時間半で安定的に推移している中、インターネットメディアが伸長している。

インターネットメディアは、Netflix(ネットフリックス)、アマゾン・プライム・ビデオなどのSVODや、YouTubeをはじめとするAVODが代表的だ。インターネットメディアのサービスの種類・コンテンツの量はともに伸長し続けている。過去のコンテンツが今後も閲覧できるというインターネットの特性上、これからも累積のコンテンツ量は増大し、人々の多様なニーズを満たしていくだろう。日常の生活に占めるメディア総視聴時間の大きな伸びは想定できない中、今後もインターネットメディアが伝統的メディアの視聴時間をさらに上回っていくことが予想される。

テレビの強みであり、「多人数リアルタイム視聴」が最適とされるスポーツ分野でも変化が起きている。ここ数年のテクノロジーの進展によりインターネットの多人数同時接続が可能になったことで、テレビ・AVOD・SVODの各企業による放映権獲得競争が世界的に激化。その結果、昨今のメジャースポーツの放映権価格も急激に上昇している。

調査では、10代がサッカー視聴時、インターネットを介したコンテンツ配信を利用する割合が2023年度時点では23%だったのに対し2024年度には50%となるなど、若年層を中心にインターネットメディアでのスポーツ視聴率は上がっている(図表2)。

サッカー視聴時にインターネットメディアを利用する割合の変化を示したグラフ。若年層を中心にインターネットメディア利用率が増加。

SVODの日本市場を見てみると、依然として米国と比べ加入者は少ないものの、2023年度と比べるとわずかながら加入者数と一人当たりの加入サービス数がともに増加しており、引き続き成長の余地がある市場といえる(図表3)。

日本のSVODの加入者数・平均加入サービス数を示したグラフ。ともにわずかながら増加している

テレビニュースの信頼度は若年層で大幅に低下

各ニュースメディアにおける信頼度を聞いたところ、選挙報道やテレビ局のコンプライアンス問題への関心が高かった時期(2025年1月)に調査を実施したことも影響し、テレビニュースへの深刻な信頼低下が示された。信頼度は全世代で低下したが、特に若年層において顕著で、10代は2023年度調査では56%だったのに対し、今回の調査では38%となった(図表4)。

各ニュースメディアへの信頼度を示したグラフ。テレビニュースへの信頼度は特に若年層で大幅に低下している

各メディアへの意見を聞いたところ、即時性が高くあらゆる角度で多様な情報が得られるネットニュースへと支持が移る一方で、全体の情報量が増えすぎたことでどのメディアを信頼して良いのか分からなくなっているという声もあった。

デバイス別割合ではスマートフォンがジャンル横断で主流

コンテンツジャンル別に利用時のデバイスを調査したところ、すべてのジャンルでスマートフォンが最も高い割合となった。これまで紙媒体が主流だった漫画についても、紙で読む人(49%)よりスマートフォンで読む人(54%)が多いことがわかっている(図表5)。

コンテンツジャンル別の利用デバイス率を示したグラフ。すべてのジャンルでスマートフォンが最も高い割合

今後は、VR、自動運転モビリティなどの技術により、人々のライフスタイルやコンテンツ取得の手段も進化する可能性がある。

今回の調査を担当したBCG東京オフィスのパートナー、黒川 あやかは次のようにコメントしている。「日本でラジオ放送が始まってから約100年、テレビ放送は約70年、インターネットの登場からは約40年が経過し、テクノロジーの進展とともに人々のライフスタイルや情報の取得方法も大きく変化してきた。

『面白いコンテンツを体験したい』『正確で最新の情報を知りたい』といった根源的な欲求は変わらない一方で、それに応えるコンテンツや情報の質、届け方には常に進化が求められている。メディア企業にとって、信頼度の高い情報や価値あるコンテンツをどのように創出し、どのチャネルで展開していくかは進化と選択を求められる重要課題だ。これまでの事業スタイルや経営方針に固執せず、トライアンドエラーを積み重ねたうえで、エンドユーザーに向けて一貫性のある情報を継続的に提供する、戦略的なプロセスが必要となる」

調査レポート:2024年度コンテンツ消費者行動調査(2025年6月)

調査概要:
日本全国の15~69歳の男女を対象にインターネットで実施。
回答者数:回答者4,400名のうち、有効回答があった3,645名
期間:2025年1月22日~28日

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