経営層へのプレゼンで空振りしない「伝え方」――BCG流・効果的な資料作成術

経営企画の業務において、資料作成は避けて通れない仕事の一つだ。時間をかけて分析や検討を重ね、万全の準備で経営層に説明したにもかかわらず、期待した反応が得られず想定外の空振りに終わる――そのような悔しい思いをした人も多いのではないだろうか。もちろん、伝えたい内容自体が十分に整理されていない場合もある。しかし、中身は十分に練り上げられているのに、「伝え方」が適切でなかったがゆえに、その価値が正しく伝わらないケースも存在する。

連載第3回では、経営企画に求められる「伝える力(資料作成術)」について、その意義と必要なスキルセット、実践上の要点を概説する。

伝える力=情報伝達の歩留まり率を高めること

伝える力とは、「伝えたい主張を論理的にまとめ、相手に合わせて効果的に伝える力」のことである。仮に思ったことの7割しか文章やスライドに落とし込めず、さらにプレゼンテーションでもそのうち7割しか表現できなければ、相手には49%(70%×70%)しか伝わらない(図表1)。つまり、伝える力とは、情報伝達の“歩留まり率”を高めることだとも言える。どれほど深く考え抜き、最良と思われる結論を導き出したとしても、それが相手に十分伝わらなければ意味がない。むしろ、伝わらないことで価値が損なわれてしまうことさえある。では、この情報伝達の歩留まり率を高めるためには何が必要なのか。

伝える力の重要性を示した図表。思ったことの7割しか文章に落とし込めず、さらにプレゼンでもそのうち7割しか表現できなければ、相手には49%しか伝わらない

土台となるロジカルライティング

ロジカルライティングとは、伝えたいメッセージを、論理的な整合性を保ちながら簡潔かつ明瞭に表現するためのスキルである。まず、論理的な整合性を保つためのポイントは、論理の二つの軸を意識することにある(図表2)。

ロジカルライティングにおいて重要な、縦と横の二つの論理軸を示した図表。どちらの軸においても整合性を保つことが求められる

一つ目は「縦の論理」である。縦の論理とは、上下の文章が因果関係・補足関係になっており、話の流れに飛躍がなく一貫性や必然性が保たれている論理構成を指す。皆さんが作成した資料の文章は、「ゆえに」「したがって」などの順接で自然につながっているかだろうか?もし、「ちなみに」「ところで」など話題転換の接続詞が多く出てくる場合、縦の論理が途切れてしまっている可能性が高い。

二つ目は、「横の論理」だ。横の論理とは、主張を支える根拠が不足しないよう、同じ階層にある文章の粒度をそろえて全体としての網羅性や妥当性を確保するための論理構成を指す。「加えて」「たとえば」といった並列や例示の接続詞によって、主張の根拠に厚みを持たせる役割を果たす。

次に、「簡潔かつ明瞭」に表現するうえで有効なのが、箇条書きの活用だ(図表3)。日本語は文末に結論(述語)がくる言語であるため、文章が長くなるほど要点が見えにくくなる。そこで、箇条書きの先頭に結論を置き、段落を字下げしてその根拠や補足情報を配置する。こうすることで、読み手は要点を素早く把握でき、理解を大きく促すことができる。この構造は、縦の論理と横の論理を分かりやすく示すうえでも重要である。

通常の文章と箇条書きを比較した図表。文章で簡潔かつ明瞭に表現するには箇条書きが有効であることを示している

主張を視覚的かつ直感的に訴えるスライド作成

ロジカルライティングによって文章で主張のストーリーを描いたら、スライド作成に移る。ただ、誤解を恐れずに言うと、実は論理的に構成された文章さえあれば、スライドは必ずしも不可欠なツールではない。実際、コンサルタントの仕事でも、数枚のWord資料だけで経営層との議論に臨むこともある。それでもなお、スライドが広く用いられるのは、文章にはない独自の効用があるからである。

一つ目は「補足」である。文章だけでは表現しきれない因果関係や構造、時間軸を、視覚的かつ直感的に示すことができる。優れたスライドは、物事の本質を数秒で相手に理解させる力を持つ。ときには、一枚のスライドが象徴的な存在となり、共感を生み、長期にわたって改革の羅針盤として機能することさえある。

第二の効用は「議論の活性化」だ。例えば、2×2のマトリクスで戦略オプションを整理し(図表4)、経営企画部としての推奨案を示したとする。選択肢が視覚的に整理されることで、経営層との間で他のオプションについても自然と議論が広がることがある。二次元、場合によっては三次元でフレームワークを提示できる点は、スライドならではの強みである。

市場と製品を既存・新規に分けて整理したアンゾフの成長マトリクス。選択肢を視覚的に整理することで、経営層との間で議論が広がりやすくなる

スライド作成の定石パターンとは?

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